2014年1月19日実施

センター試験 物理T の解説   

川村理系塾 川村千誉志

 

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問われているのは高さなので、高さを含む等式“力学的エネルギー保存の法則”を用いて注目する高さについて解きます。

斜面は滑らかないので、摩擦によるエネルギー損失は考えなくてよく、注目する2つの状態(A点とC点鉛直上向き最高到達点)、では物体は静止しているから運動エネルギーも共に0。よって位置エネルギーだけに着目すればよいので、A点で初めに物体が持っている位置エネルギーがC点鉛直上方の位置エネルギーに等しいとし、答えはHでC。簡単すぎてびっくりする問題。(必要時間:15秒)

 

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消費電力量を求めます。

消費された電気エネルギー(J)を問われているので、消費電力(W)と電流が流れた時間(s)の情報を得て、掛け合わせれば答えになります。(ちなみに私は消費電力(W)を仕事率 (J/s) と理解しています。単位の意味合い的にはそのほうが考えやすいからです。)

消費電力W(ワット)は、抵抗に印加された電圧と電流の積(E*I、単位で言うとV*A)で与えられますが、いま印加電圧は問題文中に与えられえていないためこの式はそのままでは使えません。その場合は、オームの法則E=IRを用いて、消費電力Wを抵抗と電流を用いた表現R*I*Iにして求めます。その結果(消費電力)にさらに印加時間を掛けて、消費電力量を求めます。答えは1*107乗でDが正解。 (指数計算で間違えないようにしてくださいね。)

雷という自然現象を回路に置き換える視点が面白い問題。(必要時間:30秒)

 

 

 

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色(振動数)の異なる光の実像位置を求めます。

「屈折率は赤より青のほうが大きい」と書いてありますから、屈折率の大きい青の光が赤より大きく屈折します(屈折角が大きい)。(定性的な判断で答えが出ますから、スネルの式を持ち出すまでもないでしょう。)

よって実像がX点よりレンズに近い光軸上に出来ます。正解B。(必要時間:15秒)

(参考)この現象はレンズの色収差と呼ばれ、光源が白色光(いろいろな振動数の光を含む)の場合、色ごとに実像のできるピント位置が異なるため、像がわずかにぼけます。カメラにはこの色収差をできるだけ少なくする技術が盛り込まれています。

 

 

 

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フレミング左手の法則

左のアルミ箔は下から上に電流が流れていますから、直線電流のつくる磁界は同心円状で右ネジの法則に従うのでP点ではb方向に磁界が発生します。

フレミング左手の法則により、右側のアルミ箔はaのほうに力を受ける。ちなみに左側のアルミ箔は右側アルミ箔を流れる電流がつくる磁界により、左側に力を受ける。(両者離れる方向にうごく)正解B。(必要時間:20秒)

 

 

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弦の振動数を求める問題。

コマがある場合は振動する部分の弦の長さが半分になりますから、すなわち波長が半分になります。音速は変わらないから、f=(V/λ)により振動数は2倍になります。

コマを真ん中からずらせばずらすほど、低い振動数側の音と高い振動数側の音の振動数の差が違ってくるので、うなりの回数が増えてゆく。一秒間で聞こえるうなりの回数(つまりうなりの振動数)が増えると、振動数の逆数である周期(一回の振動あたりの時間)は短くなる。正解はB。(必要時間:20秒)

 

 

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モーメントのつりあいの問題。

モーメント= 力×回転中心から力の作用線までの距離

ですから、時計回りのモーメントはMbg、反時計周りのモーメントはmag これらが等しいと置いて両辺gで割れば Mbma 正解はE(必要時間:15秒)

 

 

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A 問1

交流波形の選択。

商用電源交流100V(実効値)の最大電圧は約140Vとあるので(厳密には100*2V)

電圧レベルの視点から、選択肢の@BDの波形は捨てられる。

周期に関してはCが見やすく周期は0.02秒で50Hzのものとすぐわかる。60Hz50Hzより振動数が大きいので周期は短くなる(計算で求めたり、グラフの目盛りを正確に読む必要はない)正解はA(必要時間:15秒)

 

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A 問2

電線の損失電力が変圧コイル(トランス)を使うことによって削減できることを示す問題。

電線の損失電力P1は電線を素子とみなしたときに消費される電力である。電力を求めたいので、電線を流れる電流と電線に印加されている電圧を探して掛け合わせるか、往復電線全体の抵抗値と流れる電流の二乗を掛け合わせればよい。(第1問の問2と同じ考え方。)

1m当たりの電線の抵抗値(つまり線抵抗率が0.0002Ω/m)が与えてあることから、回路中の電線往復400mの長さを掛けて電線全体の抵抗値(0.08Ω)を求め、一方電熱器Rに印加している電圧が100Vでその電熱器の消費電力が1.0kWであることから電熱器に流れる電流は1000W100V10Aと求まる。直列回路なので電線を流れる電流も10A、よって電線の損失電力P10.08*10*108Wと求まる。□8マスの正解はE(必要時間:30秒)

 

次に変圧コイルをかませた場合の電線による電力損失を求める。

2次側の電熱器Rに印加される電圧は100V、消費電力は1.0kWとあるから、電熱器に流れる電流は1000W÷100V10Aである(求めなくてもよいが簡単にもとまるので参考までに)。

電線による電力損失を求めるためには前半の問題で取り扱ったように、電線の抵抗値は分かっているので、あとは流れる電流値を求めればよい。変圧コイルでは1次コイルと2次コイルの巻き線数の比がコイルに発生する電圧の比になるので※、1次コイルは2次コイルに発生している100V20倍すなわち2000Vが印加されている。変圧器では一次側と二次側で電力は保たれるとあるから1次側でも消費電力は1.0kWとしてよい。よって一次コイルを流れる電流は1000÷20000.5であり0.5Aと求まる。したがって変圧コイルをかませた場合の電線による電力損失は0.08*0.5*0.50.02W

よってP20.02WP18Wであるから、P2P10.0025倍と求まる。よって□9マスの正解選択肢は@(必要時間:30秒)

実際の生活に使われている電力の供給に関して、送電ロスを減らす工夫がされていることを、数式で実感できる良い問題。

1次コイルと2次コイルをつなぐ鉄心内部の磁界の変動によって、1巻きあたりに発生する電圧はレンツの法則により同じだから、巻き線数に比例して電圧が発生する(たくさん巻けばたくさん電圧が発生する)

 

 

 

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B 問3

直線電流が受ける力を考える。Aの金属棒には電流が上から下に流れるから、フレミング左手の法則によりQ方向にAの金属棒は動く。一方Bの金属棒には逆方向に電流がながれるからP方向に動く。正解はB(必要時間:15秒)

 

 

B 問4

磁場の強さを大きくすると、閉ループ内の磁場が強くなり(ループ内の磁力線の本数が増えるから)その磁場を打ち消す方向に磁場(磁界)を発生させるように電流が流れる(誘導電流)。その電流が磁界から力からを受けるのでフレミング左手の法則により、A金属棒もB金属棒もQ方向に移動する。正解はC(必要時間:20秒)

 

 

 

 

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A 問1

ドップラー効果で伝わる波を、ベルトコンベアー上を移動する物にたとえて答えさせる問題。ドップラー効果の原理の本質を知っている生徒さんにとってはやさしい問題。

公式をただ使うのではなく、本質を問う問題、理屈で現象を追う問題であるところが個人的には好きである。

 

作業者が動かない場合、コンベアーの速さはVであるからT秒間隔で箱をおけば、箱の間隔距離はVTo(速さ×時間=距離)となる。

作業者が速さvaで前に進むと、To秒の間にva×Toの距離を作業者は進むことになるからその歩いた距離の分だけ、今から置こうとする箱が前回置いた箱に距離的にちかづくことになる。つまり、ベルトコンベアー上を進んでいく前回の作業で置いた箱を追いかけるから、今から置く箱と以前に置いた箱との間隔はせまくなる。その距離がdである。よってdはVToからvaoを引いて、 d=VTovao ToでくくってTo(V−va)が□アの答え。

 

作業者Bは箱の間隔距離dを速さVで進む箱を受け取ることになるから、距離÷速さで□イはd/

 

アとイをあわせて選択肢はD.

 

 

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“箱の位置を波の山に対応させる”とあるから、箱の間隔は波の山と山との間の距離に相当する。よって「波長」が「ウ」に入る。

波が媒質(空気等)を伝わる速さは、音源や観測者の速さにはよらない。なぜなら音源から波が一旦はなれてしまえば、音源は、音源を離れて進んでいく波には影響を与えることは出来ないからである。波を伝えることは媒質のみが担当する。よって波の速さは一定になる。(ただし媒質全体が風で動いたり、媒質の温度が場所によって均一でない場合等はドップラー効果の有無にかかわらず、波の速さは異なってくる)「速さ」が「エ」に入る。

振動数は周期の逆数であり(振動数は1秒に振動する回数、周期は1回の振動にかかる時間。たとえば1秒に4回振動すれば振動数は4Hz、(Hz1/s)、周期は0.25秒。振動数は周期とは反比例の関係にあり、比例定数は1)周期はある波長の波が観測者を1個分通過する時間であり、波の速さは一定で変わらないから、周期の時間は波長を速さで割れば求まる。したがって音源または観測者が移動すると、観測者に入ってくる波の波長が変化するので、周期が変動し、その逆数の振動数も変化することになる。よって「オ」は「振動数」

正解はA(必要時間:15秒)

 

 

以下工事中

 

 

1)定常波の節-節間隔のλ/20.7-0.50.2mになるので、f=λ/vに代入して…

2)たっている波の数は変わらないから、ピストンを引いていくと、波の波長が徐々に長くなる。波長は7/5倍にのびるが、波の速さは変わらないので、振動数は波長に反比例し5/7倍となる。