大相撲観戦ガイド

「大相撲に興味はあるけれど、あまり詳しくない…」という人のために、相撲観戦の基礎知識を簡単にまとめてみました。これだけでも知っていると相撲観戦の中身がぐっと濃くなりますよ。

◆大相撲の開催時期
本場所は2ヵ月に一度、奇数月に開催されます。1年間に6回です。各場所15日間ですから、年間で90日になります。
本場所以外のときは全国各地を巡業していることが多いです(三月場所後--春巡業、七月場所後--夏巡業、九月場所後--秋巡業、十一月場所後--冬巡業)。
力士は巡業中に稽古を積み、本場所では日頃の稽古の成果をテストされるわけです。
巡業はもともと地方の有力者に相撲協会が興行権を売る形(この形態を売り興行といいます)で行われてきました。その後、平成初期の相撲人気興隆に伴って相撲協会が自分で興行するように変更されました。しかし、運営をイベント会社に任せたことで弊害が出たり、近年は巡業の客入りが伸び悩んだり不況によって企業からの協賛金が減少するなどしたため、巡業の収支が悪化してきました。そこで相撲協会は平成14年度から巡業の形態を再度改め、平成15年からはもとの売り興行に戻されることになりました。

 ●本場所日程はここでチェック!→日本相撲協会(平成15〜16年本場所日程)
 ●巡業の日程はここでチェック!→日本相撲協会(巡業スケジュール)

 ◇一月場所(初場所)  国技館(東京都)
 ◇三月場所(春場所)  大阪府立体育会館(大阪市)
 ◇五月場所(夏場所)  国技館
 ◇七月場所(名古屋場所)愛知県体育館(名古屋市)
 ◇九月場所(秋場所)  国技館
 ◇十一月場所(九州場所)福岡国際センター(福岡市)


◆優勝と三賞
15日間終わって、一番勝数が多い力士が「幕内最高優勝」です。勝数が同じ力士が複数いる場合は優勝決定戦を行います。優勝すれば賞金1000万円と数多くの賞品がもらえ、天皇賜盃に名前が刻まれ、国技館に写真が掲げられたりしてその栄誉が表彰されます。力士にとって最高の勲章です。

 ●平成以降の優勝力士はここでチェック!→Yahoo! Sports-大相撲(優勝力士一覧)

三賞とは、関脇以下の活躍した力士に与えられる賞です。横綱や大関は受賞できません。殊勲賞(横綱・大関を倒した力士に与えられる)、敢闘賞(準優勝するなど大きく勝ち越した力士に与えられる)、技能賞(優れた技能を発揮した力士に与えられる)があります。千秋楽に相撲記者クラブ所属の記者や相撲協会審判委員らの投票によって決まります。


◆番付あれこれ
最高位はもちろん横綱。次が大関。以下、関脇小結(大関・関脇・小結を三役と呼びます)、前頭と続きます。前頭は筆頭から2枚目、3枚目と続き、最後はだいたい15〜16枚目。それぞれが東と西に分かれています。幕内の定員は40名以内となっているので、横綱や三役の人数によって前頭の枚数も変わってきます。幕内の下が十両(正式には十枚目といいます)です。定員は26名以内で、東と西それぞれ筆頭から13枚目まであります。さらにその下は幕下、三段目、序二段、序ノ口と続きます。

普通、入門した力士は身体検査や健康診断などの新弟子検査クリアしたあと、前相撲を取ってから番付に名前が載ります。勝ち越すごとに番付が上がるわけですが、スピード出世の栃東・朝青龍でも入幕するまでには丸2年(12場所)かかっています。番付の下から這い上がっていくのは大変なことなのです。

一方、学生時代に特定の大会で好成績を挙げた大学出身者は、「幕下付け出し資格」という破格の待遇が得られます。平成12年までは幕下の最下位からスタートできる制度になっており、雅山などは入門してから4場所連続優勝を果たして5場所目には入幕しました。わずか1年未満の超スピード出世です。

しかし、大学出身者は付け人などの下積み生活をほとんど経験しないまま出世していくことが多いため、相撲界(角界ともいいます)のしきたりや伝統について十分に習熟できず、そのための弊害(着物のたたみ方を知らない関取が目についてきたなど)を心配する声も出てきました。明治大学相撲部出身にもかかわらず幕下付け出し資格を得られなかった栃乃花が、前相撲から始めて三役にまで昇進する活躍を見せたこともあり、協会は付け出し資格を与える条件を厳しくすることにしました。

そして平成13年初場所から幕下付け出し資格が改定され、資格が与えられる条件がより厳しくなりました。厳しくなった条件をクリアした人は今までよりも優遇される(幕下15枚目格で付け出される)一方、クリアできない人はすべて前相撲から始めることになりました。

 ●最新の番付はここでチェック!→大相撲ホームページ(番付)


◆横綱と大関の昇進
大関は、小結・関脇で連続3場所以上好成績をあげると、相撲協会の審判部というところが理事会(相撲協会の最高幹部たちを「理事」といいます)に推薦し、理事会がこれを承認すると決定します。だいたい3場所通算で32〜34勝が目安といわれていますが、明確な基準はありません。この数字をクリアして見送られた力士もあれば、この数字以下で昇進を果たした力士もいます。魁皇は7度目の挑戦で悲願の昇進を果たしました。武双山や栃東もずいぶんもたつきました。それとは対照的に雅山や朝青龍はワンチャンスをものにして昇進しました。

 ●千代大海 関脇 9勝 →関脇10勝 →関脇13勝☆(計32勝)
 ●出島   小結 9勝 →関脇11勝 →関脇13勝☆(計33勝)
 ●武双山  小結10勝 →関脇13勝☆→関脇12勝 (計35勝)
 ●雅山   小結12勝 →関脇11勝 →関脇11勝 (計34勝)
 ●魁皇   小結 8勝 →小結14勝☆→関脇11勝 (計33勝)
 ●栃東   関脇10勝 →関脇12勝 →関脇12勝 (計34勝)
 ●朝青龍  関脇11勝 →関脇11勝 →関脇12勝 (計34勝)
 ☆は優勝

大関が横綱に昇進するのは、「連続優勝、あるいはそれに準じた成績をあげたとき」とされています。相撲協会が横綱審議委員会(横審)というところに横綱に昇進させてもいいかどうかを諮問し、推薦を受けると決定します。実はこの「連続優勝、あるいはそれに準じた成績」という基準は、横審内の基準で、相撲協会としての絶対的な基準ではありません。また「準じた成績」という表現が曖昧なため、過去に昇進をめぐって混乱を招いたこともありますが、平成以降に誕生した横綱はみな連続優勝して昇進しています。


◆勝ち越し、負け越し
15日間の半分以上の8勝すれば勝ち越しです。反対に8敗すると負け越しです。(幕下以下は1場所7日間なので、4勝すれば勝ち越し。)勝ち越せば次の場所の番付が原則として上がり、負け越すと反対に下がってしまいます。番付面以外に金銭面でも勝ち越しは大きな意味を持つのですが、それについては今回は触れません。

◆親方と部屋
力士は現役を引退すれば「年寄」になります。実は誰でも年寄になれるわけではなく、ある一定の基準を満たし、さらに年寄の名前(年寄名跡とか年寄株と呼ばれます)を入手しなければなりません。年寄名跡は原則として105しかないので入手するのは大変です。お金もかかります。せっかく入手して親方になってもKONISHIKIさん(元大関小錦→引退後は佐ノ山親方となったのちにタレントに転身)や花田勝さん(元横綱若乃花→引退後は藤島親方となったのちにタレントに転身)のように途中で相撲協会を去ってしまう人もいます。

年寄名跡の入手難に対する一種の救済措置として、平成10年には準年寄という資格が作られました。これは年寄名跡を持たずに引退した力士が、現役名のまま2年間協会に残ることができるというものです(当時の定員は10人)。その後平成14年になって準年寄の期間が1年に、定員が5人に変更されました。また特例として、横綱は準年寄ではなく、年寄として5年間協会に残ることができます(曙親方がその例)。同じく大関も年寄として3年間協会に残ることができます。ただし、この期間中に年寄名跡を取得できなければ退職しなければならない点は準年寄と同じです。

年寄は普通、「○○親方」と呼ばれます。元横綱千代の富士は九重親方、元横綱隆の里は鳴戸親方という具合です。現役時代に横綱・大関まで昇進した花形力士はもちろん、そうでない力士でも引退後に自分の部屋を持つことができます。もともと自分が所属していた部屋を継承する場合(九重親方がその例)もあれば、独立して自分で新しい部屋を開く場合(二子山部屋から独立した鳴戸親方がその例)もあります。こうした自分で部屋を運営する親方(部屋持ち親方といいます)に対し、自分で部屋は持たずにどこかの部屋に所属し、そこの部屋持ち親方を助けて力士の指導にあたる親方もいます。(東関部屋に所属する曙親方がその例)

 ●現在の年寄はここでチェック!→はし's Sumo Page(相撲協会年寄一覧)


◆よく耳にする相撲用語
◇右四つ、左四つ
四つとは両者が体を密着させて組み合うこと。右四つは互いに右腕を差した四つ身のことで、左四つは左腕を差した四つ身のこと。

◇上手(うわて)、下手(したて)、 巻き替え、モロ差し
上手は相手の差し手の上から廻しをつかむこと。自分の腕が相手の腕より上にある。貴ノ浪や魁皇は右上手を取ると十分。下手はその逆で、組んで相手の腕の下に差した手で廻しをつかむこと。琴光喜や時津海は右下手、海鵬は左下手を取る形を得意とする。また、上手側にあった手を下手(差し手)に替えることを巻き替えという。琴錦がうまかった。左右両腕とも下手になる四つ身をモロ差しとか二本差しとかいう。

◇差し手を返す、カイナを返す
差し手で廻しを取らず、手のひらの甲を相手の背中に付くようにしてヒジを張ること。こうすると、相手が上手廻しを取ろうとしても、ヒジを張った腕がじゃまになって届かない。カイナを返すともいう。

◇おっつけ
相手の右(左)の差し手を自分の左(右)の手のひらからヒジまでを使って、下から上へ絞るように押し付けるか、相手のヒジをつかんでねじ上げること。こうすると相手の差し手の自由がきかなくなる。自分が上手廻しを狙うときや、相手に差させないときにも有効な技。武双山や栃東、安芸乃島のおっつけは強烈。

◇はず
親指を立てた状態で、相手の脇の下に手を入れること。下から上へ押し上げると相手の上体が浮き上がる。また、相手に廻しを取られるのを防ぐこともできる。貴ノ浪と対戦する力士が、貴ノ浪に上手を与えないためにはずに当てがうことが多い。
 ●相撲の基礎知識はここでチェック!→大相撲ホームページ(相撲基礎知識)

(参考:新大相撲事典/読売新聞社)

とりあえず「初級編」はこんな感じです。この説明に誤りなどがあった場合はお知らせください。

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