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Q1:アパートを押さえるため払った金銭は戻らないの?
アパートを借りるため何軒かの不動産業者を訪ねました。
ある店の物件が気に入りましたので、その旨を告げたところ「この物件は人気物件だから急がないと他の借り手がすぐ決まってしまう。
物件を押さえるためには家賃の1か月分を差し入れてくれ」と言われました。そこであまり考えずに言われるとおりにしましたが、後でよく考えると日当たりが悪く広さのわりに案外割高だと感じましたので、次の日に「借りるのは止めたので支払った金銭を返して欲しい」と言いましたら、業者は「既に家主に連絡の上、契約を了解してもらっており契約は成立している。
金銭は手付金であるので返還できない」と言われました。こんなことってあるのでしょうか?
   A1:  ご質問のケースでは、物件が気に入ったものの、確定的に借りたいと言ったわけではないし、業者自身も手付金ではなく物件を押さえる目的で受け取っていますので、民法でいうところの契約の申し込みがあったと見るのは難しいと思います。
また、家主も相談者の家賃支払い能力や保証人について何も調べていない段階で承諾したと言うのはかなり無理があるのではないでしょうか。ですから契約が成立しているとは考えにくいと思います。
 家主としては手付金を収受する権利はありませんし、業者も家主に今回の金銭を渡すべきでなかったと考えられます。
 また、仮に業者が主張しているように「賃貸借契約」が成立しているとすると、業者は重要事項の説明をしておらず、また同説明書を交付していないことになり、宅地建物取引業法違反を問われるおそれがあります。
以上のことを念頭において、もう一度業者と話し合って見て下さい。

Q2:家賃を滞納している借家人との賃貸契約書は解約できるの?
この不況で失業し、家賃の支払いが1ヵ月以上滞っている借家人がいます。
賃貸借契約書中には、借家人が1ヵ月以上賃料の支払いを怠ったときは、家主は何等の通知催促を要せず賃貸借契約を解除することができるとの条項があります。
この契約条項を楯に日頃も態度の悪いこの借家人との賃貸借契約を解約したいと思いますが、問題はないでしょうか?
   A2:

 借家人に今回のケースのように家賃不払いがある場合において、家主が賃貸借契約の解除を実行するには、

1. 借家人に軽微とはいえない家賃の不払いがあること。
2. 家主が相当の期間を定めて家賃の支払いを求める催告をしていること。
3. 借家人がその催告期間内に家賃の支払いをしていないこと。
4. 家主が契約解除の意思表示をすること、などの条件が必要です。

1.の家賃不払いの程度としては、賃貸借契約の基礎をなす借家人と家主の信頼関係を破壊する程度と考えられ、判例等見てみますと最低3ヵ月は必要なようです。
2.の催告の期間としては1週間程度は必要だと思われます。

 以上のことから、残念ながらご質問の1ヵ月程度の家賃不払いでは、家賃支払い義務違反としては軽微であり、借家人と家主の信頼関係の破壊とまでは言い難く、契約解除は認められないでしょう。 また、契約書中の無催促解除条項についても、あまりに家主側にとって有利な特約と解され、悪くすれば公序良俗に反する契約内容ととられるかもしれません。
 粘り強く督促されることをお勧めします。それでも借家人に反省がなければ、そのことが解約の理由となるでしょう。


Q3:衛星放送のアンテナ、マンションのバルコニーに設置できないの?
衛星放送を受信するため、バルコニーの手すりにパラボラアンテナを設置しています。すると先日管理組合の方がみえて「共同アンテナを設置するので、個人のアンテナは撤去して下さい」と一方的に私に通告してきました。
私のパラボラアンテナは通常より小さい方でネジだけで留めており穴などはあけておりません。また、共同受信よりも個別受信の方が画像が鮮明と聞いておりますので取り外したくないのです。
私の要求はバルコニーの通常の用法として許される範囲ではないかと思いますがいかがでしょうか?
   A3:  衛星放送の普及に伴い今回のような問い合わせ、トラブルが増えているようです。マンションのバルコニーは本来共用部分なのですが、通常は居住するスペースの専有部分と一体となっており、建物部分の所有者等に専用使用権が認められています。
 こういったことから、居住者がバルコニーに様々なものを置いたり、設置することにより、管理組合とトラブルになるようです。そこで問題となるのが今回のパラボラアンテナの設置がバルコニーの使用方法で、通常の用法の範囲内といえるかどうかということです。
 実はこの件に関しては判例が有り、要約すると次のように判示しています。

1. 共同パラボラアンテナが設置されれば、設置日以降衛星放送の受信が可能となること。
2. バルコニーは共用部分であり設置者はただ専用使用を許されているに過ぎないこと。
3. テレビ受信向上委員会発行「マンションでの衛星放送受信の手引き」にもアンテナの設置には「管理者の承諾が必要」と明記されていること、などから共同アンテナが設置されて以後は「バルコニーとしての通常の用法」とは言えなくなる。

以上のことから、ご質問の要望は難しいでしょう。

Q4:家主に無断で組織変更することは「無断譲渡」になるの?
永年個人経営でクリーニング店を営んできましたが、税金対策上の問題もあり会社組織に変更しました。会社組織といっても社長は借家人である私で、専務は私の配偶者、息子が課長という形だけの株式会社なのです。
しかし、以前から私に立ち退きを迫っている家主は、無断で個人から会社へ借家権を譲渡したのだから賃貸借契約の解除事由が発生しており、即刻契約を解除するので出ていってくれと言います。
家主に無断で組織替えを行ったのはちょっとまずかったかなと思いますが、実質はなにも変わっていないのです。
それでも私のしたことは家主の言うように無断譲渡になり、解約理由となるのでしょうか?
   A4:  法律は借主が建物の借家権を譲渡したり、転貸したりする場合は、事前に家主の承諾が必要とされ、これに違反した場合は家主は賃貸借契約を解約して借主を立ち退かせることができると規定しています。
そこで今回の個人で借りた店を法人組織にして営業する場合、会社への借家権の譲渡や転貸になるかということですが、先ほどの規定をストレートに解釈すると、当然ながら個人と法人では人格が違い、従来個人で店舗を営業していたものを会社組織に変えて営業すれば、借家権を別人格たる会社に譲渡した又は転貸したととられかねません。
 しかし、今回の場合のようにその会社組織なるものが、全く形式的なもので、実態は従来通り借家人個人の営業と変わりないという場合、家主に対する背信行為がないので、家主側に契約解除権は発生しないとする判例が多数あります。
ですから、家主の言い分は若干無理があるようです。いずれにしても何か契約事由に変更があれば、家主に断ってからのほうがよいでしょう。

Q5:借家人が部屋を無断で改造、賃貸借契約を解約できないの?
実は借家人が家主である私に無断で借家の「和室」を「洋室」に改造してしまったのです。
洋室にするとフローリングによる階下への騒音問題も気になりますし、家主である私に一言の断りもなく、このような改造工事を勝手に行った借家人に対しての怒りがおさまりません。
このうえは、信頼関係の破壊ということで賃貸借契約を解約したいのですが、賃貸借契約書の中に今回のような「無断改造」の禁止規定を入れてなかったのです。
契約条項にないので解約は難しいでしょうか?
   A5: 一般的に賃貸借契約を解約できる内容としては、次のようなことが考えられます。

1. 家賃の滞納、不払い、
2. 賃借権の無断譲渡、転貸、
3. 無断増改築、
4. 使用目的の無断変更、
5. 共同生活の保全に反する行為の繰り返し、などです。

今回の場合は、3.の無断増改築にあたり、契約の解除はできることになります。ただ、契約書中にこの条文がないとのことですが、民法では賃貸借契約においてその使用目的を特約で特定した場合はもちろん、特約がなくても借家の構造、周囲の環境等から使用目的が定まる場合には、 そのことに従って借家を使用しなければならない「用法遵守義務」があるのと同時に、使用目的に照らして一般的に要求される注意を持って借家を保管しなければならない「善管保管義務」が借家人に対して課されており、このことに違反した場合は契約解除は可能と考えられます。
 しかし、できるだけ先ほど列記したような契約解除条項は賃貸借契約書中に定めておいたほうが入居者にとってもわかりやすく、なんといってもトラブルの未然防止に繋がると考えて間違いないと思います。

Q6:借家を円満に明け渡してもらうには?
来春、私の長男が結婚します。そこで現在賃貸している借家を明け渡してもらいたいのですが、入居しているのは先代からの借家人で、そこの息子と私は同級生で幼なじみでもあります。
このような事情もあり、なるべく円満に明け渡しをお願いしたいのですが、何かよい方法はないでしょうか?
   A6:  個人間の争いはなるべく避け、円満に解決したいと思うのは人情であり当然のことと思います。ましてや相手方が幼なじみということでは、なおさらだと思います。
しかし、当事者だけで冷静に話し合うことはなかなかできないことですし、仮に話し合いがまとまったとしても、そのことが実行されなければ何にもなりません。
 そこでこのような問題を解決するために「調停制度」というものがあります。これは、普通の裁判のように対立する当事者の間で主張の正否を決めて解決するのではなく、お互いの意見を話し合いにより調整し、解決を図ろうとするものです。
具体的には知識や経験豊富な第三者、一般的には裁判官である調停主任と調停委員2名以上で構成された調停委員会で、当事者を斡旋して条理にかない実状に即した解決を図ろうとする制度です。
 当事者だけの話し合いでは、どうしても感情的になって自分の意見を冷静に相手方に伝えることができなかったり、相手方が冷静に聞いてくれなかったりして紛糾することがありますが、そのようなときは、調停委員会が間を取り持ち問題を整理して話を進めてくれます。
 また、訴訟では申し立てた側の意見が正しいかどうかの判断だけですが、調停は相互の意見を出し合いある点では譲歩し、またある点では譲歩を求めるなどして解決内容を自由に決めることができます。
調停の申し立ては相手方の住所地を管轄する簡易裁判所となっておりますので、詳しくはそちらでお尋ね下さい。

Q7:立退料について教えて?
事情があり、どうしても借家を明け渡してもらいたいのですが、先日借家人の転居先も見つかり、立退料の額について合意に達すれば立ち退いてもよいと言ってくれています。
そこで質問ですが、立退料の算出について合理的な手法があれば教えて下さい。
   A7:   それと旧借地借家法と考え方の違いがあれば教えて下さい。
平成4年8月1日施行された新しい借地借家法において、明け渡しを求める際の正当事由の判断について、立退料の申し出も考慮することが明文化されました。
正当事由が不足すると思われる場合、立退料の提供をしたり不足分をカバーするという今までの慣行を明文化しただけで、新たに立退料を容認する制度ができたわけではありません。ですから新旧で実質的な変更はありません。
 次に借家の立退料の算定をする場合の手法ですが、次のような費用が考慮されます。

1. 移転費用 引っ越し費用、設備などの移設費用、移転通知費用などです。
2. 造作買い取り費用 借家人が家主の承諾を得て行った建具などの造作を引き取る費用です。
3. 借家権価格 借家権の経済的利益を算出し、土地や建物価格に一定割合の借家権割合を乗じて算出します。
4. 営業補償金 借家人が何か商売をしていた場合、移転することに伴い生じる損失の補償です。

立退料は具体的なケースに応じて総合的に判断されるものです。
画一的に決まるものではなく明確な方程式があるわけではないことに注意して下さい。