苺畑の君




いちご
イチゴ

と三度叫ばれて
僕は果物屋で途方に暮れる

君の欲しがっている
真っ赤なそれは

僕が欲しがった
集約された一語とは
異質の
残酷な果実

それでも目は輝いて
君は美しいから

僕は橋を渡り
丘を越え
秘密の苺畑を
夢想する

ただ焦がれることの切なさと
噛み付いた時の果汁に
目を細め
ごくんと喉が鳴る瞬間に
今があった

この土地を君に
枯れることのない
永遠の苺畑を




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