Non!
真っ黒に育て上げた卵を 彼は胸の奥底で温めていて 雨が降ろうと 雷が落ちようと 塗り固めた表面に ヒビが入ることもなく いつか孵化するために必要なものは 生まれたての透明な涙か 愛憎で搾り取られた精液か いずれの雫も 亀裂には至らなかったのだろう 生きながらえた先で 届いた声に耳を澄まし 呼び声にうずいた新生児が 殻をたたき割り 宙を舞い 私は目がくらんだ 何を言っても Non! と言うような 悪戯な神様が生んだ子だ レールのような道さえ 宇宙に変えてしまうだろう