ゆで卵の



私を
煮詰めて下さい

たったひとつの
言葉になるまで

分厚い鍋の底から
うねる泡へ

ささくれ立った表面が
溶けていく美しい光景を
私は一生忘れない

縁を蹴り
香り立つ水蒸気になれたら

換気扇から抜け出して
薄紫の夕暮れに混じる

そしてあなたが立つキッチンを
仄かに照らそう

夜が来ても
空腹が訪れないように




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