最近、福岡でもいくつかのお店で台湾烏龍茶を入手できるようになってきました。
しかし、まだ価格と味(品質)の対応として満足いけるものがなかなかなく、「ええっ、これでこの値段?」と言いたくなるものが多々あるのが実状です。

 一番最初に中国茶、台湾烏龍茶に接するときに、良質の茶葉をその良さを十分に引き出すことのできる淹れ方で淹れ、それを飲んでもらうことができれば、そのお茶の本当の良さに触れることができると思います。 しかし、この時に質のあまり高くないもの飲んでしまった場合、期待感が大きければ大きいほどその反動で失望感はとても大きいものになり、「なんだ中国茶、台湾烏龍茶はたいしておいしくないものなんだな!」という結論に達してしまいます。

 そこでできればそうならないように、台湾烏龍茶を飲む、購入する場合の茶葉の見分け方とそのチェックポイントをいくつかあげていこうと考えました。 当然、これらの情報は茶葉を売っている店ではなかなか聞けません。何せお店の人が知らないようなレベルの話ですし、知っていても自分の店で売っている茶葉が質のあまり良くないものだなんて見破られるようなことを教えるわけはないのですから。

 さらに、私の回りで入手できる茶葉のうち、お分けできるものに関しては、実費でお分けするようにしたいと考えました。但しこれは私が普通飲むもので、責任を持ってお勧めできるものですから、「通信販売」ではなく、必ず私の自宅で試飲してもらい、満足いただいたものをお分けすることを原則としたいと考えています。

 また、この章は対象とする茶葉を、台湾の半球型包種茶(凍頂烏龍茶、高山茶)に限りたいと思いますので、そのポイントでお読みください。




 ■茶葉の入手ルートは?
 日本で中国茶を飲む場合、茶葉がみなさんの手元に届くまでにいくつかのルートがあります。
これを大きく分けると以下の3つのパターンになると考えられます(詳細にはさらにいろいろなパターンがありますが・・・。)。

 パターン1
茶農 → 茶荘 → (国内の販売店) → みなさん
 パターン2
茶農 → (国内の販売店) → みなさん
 パターン3
茶農 → 農會 → (国内の販売店) → みなさん
 ※茶農:
お茶の生産者。製茶を最終仕上げ前までしか行わないところ、製茶を最後まで行うところ、茶葉の生産だけで製茶は行わないところがある。
 ※茶荘 :
茶葉の製茶と販売を行う。販売のみの場合もある。貿易商を兼ねていると考えて良い。
 ※農會 :
日本で言うところの「農協」にあたる。
台湾の行政割りである「縣」、「郷」、「鎮」等の単位で設けられ、茶葉担当の部署としては茶葉の生産管理、指導、評価、製茶、販売等を行うが、政府からの助成金を統括しているため、強い力と多くのお金を持っているところがある。なお、詳細は各農會ごとによって異なっている。
 なお、これらの定義は台湾での表現なので、大陸の場合は異なると思います。

 まずパターン1ですが、通常、デパートや中国茶屋さんの店頭で茶葉を買うのがこのパターンになります。 普通は台湾の茶荘が茶農からの買い付けや、国内外の小売店に対する卸を数十キログラム以上の大きなロットで行うため、茶葉の品質は概してあまりよくありません。300g詰めや600g詰めの汎用の袋や箱に入れられて売られ、この箱や袋を見ても、その茶葉がどの産地でどこの茶荘が売ったものかがわからないことが多いようです。 但し、少量の良質な茶葉が流通する場合はこの限りではありませんが、その量は少なく、あっても価格が非常に高くなっています。ちなみに、このルートの台湾烏龍茶を国内で購入する場合の目安ですが、店舗売りで良質なものは25グラム2000円から3500円程度するものがざらで、通常このルートで購入する普及品も50グラム1500円以上しているのが実状です。

 次にパターン2ですが、特殊な「コネ」で生産者から大事に育てられた茶葉を直接入手し、販売、もしくは紹介しているのがこのパターンになります。 古くからの知り合いや、長い商売上の付き合いによって培われてきた信用の元に茶葉を購入するのが前提になっています。 通常、ただそのお茶を飲みたくても特別なコネがない限りそのようなお茶を入手し、飲むことは望むべくもありません。もしコネがあっても茶葉の生産量自体が少ないためにまとまった量を購入することは難しく、もしできても非常に高価になってしまいます。中国茶研究家の工藤氏がお持ちの茶葉などがこれにあたります。
 先日、広島で開かれた工藤氏のセミナーへ行っていましたが、このときに飲ませていただいたお茶が氏の本にも紹介されていた、このパターンに属する「貴重」なお茶でした。

 そしてパターン3なのですが、私の現在の茶葉入手ルートのメイン部分がこれにあたります。このルートの茶葉は日本で言うならば「産直の安くておいしいお茶」となるわけです。 台湾の茶荘を経由しないことを前提にしているため中間マージンが圧縮できているのです。 実例としましては、台中の農會直営店で売られていたお茶が、台北の茶荘に来ると60%増しの値段で売られていたのですから、「これがないだけでも大違い。」といったところでしょうか。 
 また、限りなく生産者に近い立場で製茶し、販売しているため、一般的に茶葉の品質が良いものが多くなります。 パッケージもそれぞれの農會が自信を持って自分の「ブランド名」で販売しており、産地やランク付けや生産年月日がわかりやすくなっています。 例としては鹿谷郷農會が「凍頂茶」、南投縣農會が「南投茶宴」というブランドで販売しています。

 ただ、このタイプの製品は、農會がいくつかの茶農から茶葉を仕入れて一括して製茶するため、比較的レベルの高い「汎用品」が一定量生産され、安定供給されるというメリットがある反面、良質の茶葉も、あまり上手に作られなかった茶葉も一緒くたに製茶されてしまうといったデメリットもあります。
 確かに、パターン1の場合なら、良質な茶葉を作った茶農さんの良質なお茶のみが製茶され、それが手に入る可能性もあるのですが、現実的には、茶荘側が品質より利益を重視して集め、一括製造された茶葉になって売りさばかれているようです。

 しかし、この農會ルートからは「一品もの」と言える農會主催の「品評茶」(コンクールの出品茶)を、運が良ければ入手できることがあります。 その場合もパッケージが農會のシールで封印され、評価基準等がきちんと明記された外箱に入れられ、等級のシールがきちんと貼ってありますので、その茶葉の素性、内容に関しては保証されているわけです。 ただし、品評茶はその評価を受けたものと同じ茶葉は12キログラムしか存在しませんので、日本で簡単に入手できるものではないということもご理解ください。 
 でもあくまでもお茶は嗜好品であり、台湾のお茶の専門家の評価が日本人の舌にあうかどうかはまた別の問題なのですが、私としては品評茶でも私の再評価によって「これは良い!」と判断したものを、提供できる程度、このHPで紹介していこうと考えています。




 ■茶葉面(ちゃばづら)
 淹れる前の茶葉の外観のことを「茶葉面(ちゃばづら)」と言います。半球型包種茶の品評の研修の時に数多くの茶葉を見てきましたが、その結果ひとつ言えることは、「茶葉面にだまされてはいけない。」ということでした。
 茶葉の外見からすると非常にきれいな色で形も整っており、見るからにおいしそうな茶葉が、淹れてみるととんでもないものだった、ということが何回もありました。

 半球型包種茶の茶葉を見るときのポイントとして下記のような点がいくつかありますが、必ずしも「こうだから良い、悪い。」とはっきり断言できるポイントはほとんどありません。 目安としてこういうものが良いと言われる、とか、ある人はこっち、またある人はこっちが良い、と意見が別れている等々が実状です。

 ・ 色
 ・ 粒の大きさ
 ・ 粒の締まり具合
 ・ 茎の多さ、部位
 ・ 粉、くずの多い、少ない


 色は、焙煎、発酵度によって緑色から黒緑色をしています。 あまり白っぽいとちょっと疑問があります。
また、色に統一性がなく、色にばらつきがある場合も、古い茶葉が混ぜられていたり、お茶の葉でない葉っぱが混ざっている(混ぜられている?)可能性があります。

 茶葉の粒の大きさは、製茶方法によって大小いろいろあり、味に対する影響は判断できません。

 粒の締まり具合は、良く締まっていれば何回も淹れることができるので、十分に締まってるものが望ましいようです。

 茎の部分の多少は、渋味の多少への影響が大きいようです。 渋味が茎の部分から出ていることは間違いないと考えられるのですが、台湾烏龍茶の味としての渋味は不可欠の部分ですので、茎が全く入っていなくて渋くないお茶が良いお茶だとは言えないのです。 ただ、茎が芽の部分から遠い、ほとんど木のようになっている茎は、えぐい渋味になりますので、入っている茎の部位がどの辺のものかもチェックポイントになります。

 粉、くずに関して、これらが多いものはあまり質の高くない茶葉であることだけは、はっきり言えると思います。

 茶葉面の最後にもうひとつ、
 「外見がきれいでもまずいお茶はある。だが、外見が汚くてうまいお茶はほとんどない。」
 ということも言えると思います。




 ■3つの香り
 台湾烏龍茶が聞香杯を使って特に香りを楽しむお茶であることは、このHPをお読みの方はもうほとんどご存じだと思います。 これを1つ目の香りとしますが、このときの聞香杯の香りが、茶杯に移した茶液の香りと異なっていることにお気づきでしょうか。 
 これは、聞香杯から立ちのぼる香りが揮発性のもので、暖められた聞香杯の内壁で茶液が蒸発するときに立ちのぼる香りなのです。 また、その聞香杯の温度が下がって来るにつれて香りも甘いものに変わってきます。 これがあるからこその台湾烏龍茶ですので、この香りはじっくりと、聞香杯の香りがなくなるまで心行くまで楽しんでくださいね。 また、この香りが不自然だったり、ちゃんとした淹れ方をしているのにすぐ消えてしまったりする茶葉は、品質の点であまり良いものでない場合が多いようです。

 2つ目の香りは当然、茶杯の中の茶液から立ちのぼってくる湯気の香りです。 大陸系の青茶や花茶はその香りをお茶を飲みながら楽しめます。 良質の鳳凰単そうの、果実に似た香りを楽しみながらお茶を飲むのは快感ですよね

 3つ目の香りとは何でしょうか。 それは茶壺の中の香りです。 1煎目を淹れた後に茶壺の中の香りを聞いてみると、ちょっとツンとする香りがすると思います。 しかし香り自体は不快なものでなく、茶葉のエネルギーがより濃縮された香りです。 この香りが不快なものであった場合、その茶葉の品質に関して疑問がわきます。 これはきちんと作られた茶葉ではないな、と。 さらに5〜6煎以上飲んだ後の茶葉の香りも良い茶葉であれば、感覚的にすっきりとした良い香りがしますので聞いてみてください。

 これらの3つの香り全体に関して言えることは、
  「人間は正直な生き物なので、この香りに不快な感じを受けた茶葉は良いお茶ではない。」
 と言うことです。 しかし、現代人は食生活、回りの環境によって、香りに関して鈍感になっている状況もあり、この評価方法は、ある程度味と香りの評価に自信がある方に限る、と言えるかもしれません。




 ■4つの味
 台湾の烏龍茶セミナーで、品評の研修の時に台湾烏龍茶の味に関して、4つの味覚ポイントで評価を行う、ということを教えてもらいました。
 その4つの味とは、
  • 渋味
  • 甘味
  • 酸味
  • 苦味
 の4種類でした。

 渋味と甘味はどちらかというと良い判断ポイント、酸味と苦味はどちらかというと悪い判断ポイントになると思います。

 特にポイントとなるのが「渋味」になると思います。 この渋味の成分の中心はタンニンで、品評の模擬試験の時には、濃さの異なるタンニンの水溶液で渋味の確認試験を行いました。
 日本人の味覚感において、渋味はあまり良い味とは認識されていないようです。 たとえば、紅茶や日本茶の渋味はそのお茶をまずく感じさせる要素ですし、渋柿はそのまま食べるものではなく、干し柿にして甘さを凝縮して食べるものです。 また、渋味は苦味と混同され、苦い薬を連想させるため、「渋味がある飲み物」というイメージがあると、手を出したくなくなる傾向があるようです。
 これに対して、台湾烏龍茶の渋味はこれまでの味覚感の渋味とはちょっと違うものです。 台湾烏龍茶における良い渋味は、口の中をさっぱりさせたり、引き締める感じがします。 たしかにこの渋味が強すぎて雑味にまでなってしまっている茶葉もありますので、実際に飲んでみて、感じてみてください。 この渋味は茶葉における茎の割合が多いものや、焙煎が強めな仕上げをされた「濃香」のタイプの茶葉に多く出ます。 台湾烏龍茶において渋味は、清涼感や軽さと対極にある魅力ですので、色々飲み比べていくうちにどちらが自分の好みかを確立していってください。

 甘味に関しては、特に清香系の茶葉ではっきり感じることが多いですが、濃香系の茶葉でも他の味と組合わさって複雑な味わいを構成します。 中国茶が甘いといっても日本茶のアミノ酸のトロリとした甘さと異なり、さっぱりすっきりとした甘さがでます。 しかし、まれに中国茶でも肥料の与え方によって、アミノ酸的な甘さを感じる茶葉があるかもしれませんが、私としては不自然な感じがして好みではありません。

 お茶の味で酸味というと変な感じがするかもしれませんが、台湾での品評時に確かに酸味を感じる茶葉がありました。 好みのひとつとして作られることがあり得るという感じでとらえておいて良いと思います。 これも私としては好みの味ではありません。

 最後に苦味ですが、これはむしろ茶葉の本当の味、きちんと製茶された茶葉では出ないもので、古かったり、お茶の葉でない葉っぱが混じっている場合などに感じることがあります。



 ■出がらしの茶葉は?
 最後に、3煎、4煎、5煎と飲み終わった茶葉を茶壺から取り出して皿などに広げてみてください。 さあ、どういう茶葉がそこに姿を現していますか。 
 切れ切れ、ザクザク、ぼろぼろの茶葉でしょうか。 それとも、芽と2,3枚の葉が枝でつながったきれいな「お茶の枝」でしょうか。

 基本的に切れていない芽と葉と枝から構成されているお茶がより良質です。 切れ切れの状態ですと、すぐに開ききってしまい、味が出きってしまいますので2,3煎しか飲めないものになってしまいます。
 十分に揉まれた茶葉が何煎もお湯を注ぎ、飲まれていく途中で徐々に開いていき味を少しずつ出していく。それがずっと続いて気がつくと10煎まで飲んでいる、というのが良いお茶です。

 現在、台湾での烏龍茶の製茶は大きく、「機械を取り入れた家内制手工業」と、「手作業の入った生産工場」の形態に別れます(非常に小規模としては、完全手作業のところもあるとは思いますが。)。

 実際にはやはりより手作業に近い形で、歴史の中で培われてきた製造方法によって作られた茶葉の方が、より機械化されたものより、美味しく、絶品と言えるものが出てくるのは否めません。 とはいえ、製茶は一気に行わないといけませんので、手作業が多いとたくさん摘めませんので得られるお茶も少量になりますし、機械化されているとたくさん摘めて、多くのお茶を一度に生産することができます。
 作る側としてはたくさん作ってたくさん売ってたくさんのお金にしたいと考えるのは当然ですので、そこのところが難しいですよね。

 機械化されると、まず茶葉の摘み取りの形態から異なり、その形がそのまま最終製品の茶葉の形になって現れてきます。

 茶摘みの方法としては、「手摘み」、「ハサミ摘み」、「機械摘み(バリカン摘み)」に分けられます。

 「手摘み」はそのものズバリ、手で摘んでいきます。 ただ、日本の「摘む」形の茶摘みと異なり、最近ではカッターを指に付けて「千切り取る」形で摘んでいきますので、断面を見ても手摘みかどうかは判断できません。 この場合は、製茶の責任者が茶摘み担当の女性の方々に「今日は1針2葉で摘んでください。」とか、「1針3葉で。」とか指示することで、量に限界はありますが、レベルの整ったきれいな茶葉が集められます。

 「ハサミ摘み」は剪定用の大きな両手バサミで摘んでいきます。 ある程度、切れ切れになった茶葉は出ますが、最終製品化直前の「選別工程」で切れ切れの茶葉を取り除くことで、手摘みに近い、整った茶葉を作ることができます。

 「機械摘み(バリカン摘み)」は機械的に一気に摘んでいきます。そのため、芽や葉がほとんど切れ切れの状態になってしまい、お茶として淹れるとすぐに味が出てしまい、2,3煎でもう飲めなくなってしまいます。

 あと、出涸らしの茶葉のチェックポイントとしてもう2つ。

 
「お茶でない葉っぱは入っていませんか?」
 台湾で烏龍茶として使用される主なお茶の品種とその葉の形状を下記にあげます。
 これを見てわかることは、「少なくとも茶葉の形は、細長くも丸くもない、長丸い形をしている。」ということです。 ですから、出涸らしの茶葉の中に、「どう見てもこれはお茶の葉っぱではないな。」と思われる葉っぱが入っていたら要注意です。 偶然、または故意にお茶の葉ではないものが混じっているのですから、当然味は妙に青臭かったり、苦かったり、不自然なものになっているはずです。

 
「一部に妙に色が違ったり、堅かったりする葉っぱは入っていませんか?」
 一部の茶葉が他の茶葉と比べて明らかに色が違っていたり、堅かったりした場合には、別の時に製茶されたものが混入している可能性があります。 茶葉の品種が違ったり、前年のものを混ぜられたりしているわけですので、当然味にまとまりはなく、「えぐい」味になっていたりすることが多いようです。

 等々、出涸らしの茶葉が見て感動を受けるようなきれいで美しいものであったならば、そのお茶は茶農さんの愛情のこもったすばらしいお茶であると思いますよ。


でも、まとめとして結局言えるのは、
 「自分が美味しいと思った茶葉が一番!」 
ということです。

いろいろな人から良いお茶を手に入れて飲んでみてください。
 ただ、闇雲に人に頼むと「ハズレ」が多く、
頼んだからには美味しくないお茶を飲み切らないといけなくなるので、
「確実にあの人は私より良いお茶を持っていそうだ。それがわかる人のようだ。」という人に
お願いして頼んだ方が、早く幸せなお茶に巡り会えると思いますよ。

みなさんが良いお茶に巡り会えますように、私もお手伝いをしていきたいと考えています。