◎ファイナル答練民事訴訟法(1−1)

被告とされた者が死亡した場合に、民事訴訟上いかなる取り扱いがなされるかについて論ぜよ。



 

1、原則
(1)誰が被告か
「被告とされた者」とは通常被告を指す。
もっとも、被告とされた者が必ずしも被告でない場合もありえる。
そこで、誰が被告なのか。当事者の確定が問題となる。

当事者とは訴え、訴えられることによって判決の名宛人となる者>訴状送達や管轄の基準となる。
とすれば、誰が当事者かは訴えの提起後直ちに、客観的かつ明確に定められる必要有り
よって、訴状の記載を基準に判断するのが原則
もっとも、訴状が誰を当事者としているかは、ある程度合理的な解釈にゆだねられる。
具体的には、当事者欄だけでなく請求の趣旨、原因もまた考慮して判断すべし

(2)被告が死亡した場合
被告=当事者>死者には当事者能力を欠く(28条)
ゆえに被告が死亡すれば二当事者対立の原則(訴訟要件)が崩れる。
よって、不適法却下が原則

2、救済方法
不適法却下が原則
そのうえで、相続人がいれば、改めて訴えを提起する
しかし、それまでの訴訟結果が無駄>訴訟経済上の損失&再訴の煩
そこで、訴訟の進行状況に応じて様々な取り扱いの要

(1)訴訟係属前に被告が死亡していた場合
(ア)訴状審理の段階で判明
>補正命令(137条1項)で救済
>さもなくば訴状却下命令(137条2項)

(イ)訴訟進行後判明
原則は不適法却下
しかし、訴訟係属中訴訟代理人を選任していれば訴訟承継される。
なのに、訴訟代理人を選任していながら、訴訟係属前というので承継を否定されるのは酷
加えて、訴状を裁判所に提出していながら、相手方に到達する前に死亡した場合>訴訟係属は未発生
しかし、本人としてはやるべきことはやってしまっているわけで、承継が否定されるのは酷
そこで、かような場合には潜在的な訴訟係属が認められると解して124条1項1号を類推
訴訟係属を肯定すべき
>確定前に判明すれば訴状の表示の訂正
>確定後は判決の更正(257条)

なお、潜在的な訴訟係属なし、&相続人が訴訟活動を追行中
任意的当事者変更による救済

(2)訴訟係属後に被告が死亡した場合
訴訟は中断>相続人が訴訟を承継する(124条1項1号、2項)
もっとも、訴訟代理人がいればその限りではない

誤って本案判決
>上訴で取り消しうる(281条、312条2項4号類推)
>確定後は再審により(338条1項3号類推)

(3)口頭弁論終結後に被告が死亡
裁判所は判決言い渡しが可能(132条1項)<言い渡しに当事者の関与は不要
言い渡し後上訴期間が過ぎれば酷
よって、上訴期間は停止する(132条2項)
 

(4)確定判決後に被告が死亡
この場合は、判決効は口頭弁論終結後の承継人に及ぶ(115条1項3項)
よって、相続人に判決効が及ぶ。

(5)相続人がいない場合
以上の救済策は、相続人のいる場合の処置であり、相続人がいない場合は原則にもどって訴訟は終了する。
 

以上


◎ファイナル答練民事訴訟法(1−2)

甲の運転する自動車と乙の運転する自動車が衝突し、その巻き添えで通行人丙が負傷した。かかる事案を前提に以下の問いに答えよ。
(1)丙は甲及び乙を共同被告として不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したが、その訴訟の第一審で甲に対する請求は認容されたが、乙に対する請求については乙に過失がないことを理由に棄却された。
この場合、甲は丙側に補助参加し、乙に対して控訴することができるか。
(なお、甲は自己の敗訴判決に対して控訴せず、判決が確定したものとする)
(2)丙が甲を被告として不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。
これを受けて、甲は乙に対して訴訟告知をしたが、乙は丙側に補助参加の申立をした。
仮に、乙の補助参加が認められたとして、かかる訴訟において、丙の負傷が甲および乙の共同不法行為によるものであることを理由とする甲敗訴の判決が下された場合、後に甲乙間で係属した求償訴訟において、乙は自己に過失がないことを主張することができるか。


1、小問(1)について

(1) 甲は補助参加をすることはできるか?
 (ア) 補助参加とは、係属中の他人間の訴訟について利害関係を有する第三者が、当事者の一方を勝訴させることによって間接的に自己の利益を守る訴訟形態である。
 とすれば、その要件は@係属中の他人間の訴訟であること、およびA訴訟の結果について利害関係を有すること、である(42条)。
 (イ) @については、甲と丙は共同被告であるので、他人間の訴訟といえるかが問題となるが、通常共同訴訟においては、共同訴訟人独立の原則が採られ、各自が固有の利益を有するのであるから、他人間の訴訟としてさしつかえない。
 (ウ) では、Aについてはどうか。
 まず、ここにいう「利害関係」とは単なる事実上の利害関係では足りず、法律上の利害関係を要する。なぜなら、民事訴訟の目的は法律上の紛争の解決だからである。
 次に、「訴訟の結果」とはどういう意味か。
 この点、訴訟の結果とは、通常、請求に理由があるか否かの判断をいうから、補助参加する者の地位が、判決の主文中の判断より論理的に決定される場合と解するのがよいようにも思える。
 しかし、そもそも補助参加の制度とは、被参加人と相手方との訴訟の判決が、将来、第三者の不利に働くおそれがある場合に、その第三者の手続関与を認めて不利な結果を防止する機会を保障する制度である。
 とすれば、訴訟の結果を主文中の判断に限る必要はない。訴訟の結果下される理由中の判断も含むと広く解するべきである。
 (エ) 本問においては、@の要件は認められる。
 また、判決理由において、乙の無過失が認定されているが、これは後に甲乙間で求償権について争いが生じた場合、乙の過失の認定について甲に事実上の不利益が生じることになる。
 よって、甲にはAの参加の利益も認められる。
 (オ) したがって、甲は補助参加をすることができる。

(2) では、次に、甲は補助参加人の地位に基づいて控訴をすることができるか。
 この点、確かに補助参加人は独自の判断で「上訴の提起・・・その他一切の訴訟行為」をなしえるのが原則である(45条1項)。
 補助参加人は主たる当事者とは別個の独自の立場で訴訟に参加する者だからである。これを補助参加人の独立性という。
 しかし、法は一方で「被参加人の訴訟行為と抵触」する行為はなしえない旨を定めている(45条2項)。
 補助参加人は当事者として独自に請求をたてて参加する者ではないから、その独立性は被参加人の訴訟行為の範囲内で認められるにすぎないのである。これを被参加人の従属性という。
 本問において、丙が上訴権を行使したのか、放棄したのか明らかでないが、仮に上訴権を放棄したのなら、甲が控訴することは丙の行為と抵触する行為ということとなるので、許されないと考える。

2、小問(2)について

(1)乙は自己に過失がないことを主張することができるか。丙・甲間の訴訟において、甲および乙の過失が認定されているため問題となる。

(2)まず、乙は丙に補助参加しているため、補助参加の効力(46条)として、丙・甲間の訴訟の効力が乙にも及ぶのではないかが問題となる。
 この点、通常「裁判の効力」とは既判力や執行力等を指すので、ここにいう効力とは、既判力が補助参加人にも拡張されることを意味するようにも思える。既判力は、後訴に対する通用性ないし拘束力であるから、甲・乙間の訴訟にも効力が及ぶことになる。
 しかし、既判力は例外を許さず画一的に働くことに意味があるところ、46条では明文で様々な例外を設けており、これは既判力の性質に反する。
 思うに、46条は、参加人が被参加人の勝訴の利益を目的として訴訟に参加した以上、敗訴の不利益もまた負担するのが公平の原則に合致するとの趣旨で規定されたものである。
 とすれば、これは被参加人敗訴の場合に参加人と被参加人との間にのみ及ぶ特殊な効力(参加的効力)と解するべきである。
 したがって、補助参加の効力は甲・乙間の訴訟には及ばない。

(3)次に、甲は乙に訴訟告知をしている。
 訴訟告知をした場合、被告知者は46条の限度で、告知者・被告知者間の後訴で参加的効力を受けるとされている(53条4項)。そこで、丙・甲間の訴訟の効力が乙にも及ぶのではないかが問題となる。
 そもそも、訴訟告知に参加的効力が認められるのは、補助参加によって紛争の一回的・合一的解決をなすことができ、参加することが期待されるにもかかわらず、あえて参加しない被告知人に対して参加的効力を及ぼしても、告知による参加の機会が与えられている以上手続保障の点に欠けるところはないからである。
(ちょっと苦しい論証やなぁ・・・告知人の利益・裁判所の利益の強調)
 しかし、被告知人は告知人側に参加しても告知人と抵触する行為はできない(45条2項)のだから、告知人と被告知人との間に利害の対立がある場合には、告知人の相手方に参加することもあり得る。
 かような場合には、共同して訴訟を遂行して敗訴判決に至った責任としての参加的効力は、適用の前提を欠くというべきである。なぜなら、参加することによって不利益を受ける告知など、被告知人の手続保障にならないといえるからである。(対する被告知人の利益の尊重)
 よって、現実に相手方に補助参加した場合には、53条4項の適用はないと解すべきである。
 したがって、丙・甲間の訴訟の効力は乙にはおよばない。

(4)以上により、乙は甲・乙間の訴訟において、自己に過失がない旨を主張できる。

以上