捜査において強制処分を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容される。しかし、ここにいう強制処分とはいかなるものをいうか。強制捜査と、強制の処分によらない捜査、すなわち任意捜査との区別が問題となる。
この点、直接強制の行われる場合、又は少なくとも間接強制を伴う場合を強制処分とするとする説が従来主張されてきた。
しかし、かような処分態様の異常性のほか、処分に向けられた法益の内容にも注目すべきであって強制に基づく場合や義務を負わせる場合のみならず、隠密裡にではあっても、同意を得ずに個人の法益を侵犯するような場合も強制処分に含まれると解するのが妥当である。
この基準からは、有体物に対する捜索・押収などの古典的な処分が強制処分たることは明らかであるが、それ以外にも、プライバシーのような無形的な法益に対する侵害行為も強制処分となり得る。