逮捕・勾留の一回性の原則

 同一事実についての逮捕・勾留は原則として一回である。これを逮捕・勾留一回性の原則という。これを認めた明文はないが、再逮捕・再勾留を無条件に認めれば、逮捕の留置期間、拘留期間の制限は無に帰してしまい、人権保障は危うくなるため、承認されている。
 この原則は次の二つの内容を含む。
 (1)同一の犯罪事実について、同時に2個以上の逮捕・勾留を行うことはできない。これを「一罪一逮捕・一勾留の原則」という。ここに「一罪」とは、公訴事実の同一性を基準とするとされている。 (2)同一の犯罪事実について逮捕・勾留は、時を異にしてそれを繰り返すことはできない。これを「再逮捕・再勾留の禁止の原則」という。ここでも「同一の犯罪事実」の客観的犯意は、ほぼ公訴事実の同一性が基準となる。


 一罪一勾留の原則

 一罪に対して一回の勾留しか許されないという原則は、明文規定はないが、一般に承認されているところである。
 ここに「一罪」という場合、その範囲は何を基準に考えるべきか。常習罪で勾留され保釈中の被告人が、さらに常習として同一犯罪を行った場合に問題となる。 この点、勾留の対象は、実体法上の一罪と必ずしも一致することなく、現実に犯された個々の犯罪事実であると解する説もあるが、勾留の対象は実体法上の罪数を基準として考える説が妥当である。
 同原則は長期の不当な身柄拘束を排除する趣旨から認められるものであり、実体法上一罪とされる範囲では、検察官は捜査上同一処理の義務を負うべきだからである。
 しかし、同原則にも例外はあり、およそ検察官が捜査上同時処理が不可能である場合には、例外として、一罪について二個の勾留を認めてよいと考える。
 当該後罪の勾留もこのケースといえる。



 一罪一逮捕の原則

 同一事実についての逮捕・勾留は原則として一回である。これを逮捕・勾留一回性の原則という。これを認めた明文はないが、再逮捕・再勾留を無条件に認めれば、逮捕の留置期間、拘留期間の制限は無に帰してしまい、人権保障は危うくなるため、承認されている。
 ただし、捜査の流動性と必要性から例外も認められている。
 すなわち、逮捕については、法規そのものが例外を前提にした規定を置いたので(199条3項、規142条1項8号)、(1)新証拠や逃亡・罪証隠滅の虞れ等の新事情の出現により再捜査の必要性があり、(2)犯罪の重大性その他の諸般の事情から、被疑者の利益と対比してもやむをえない場合であって、(3)逮捕の不当な蒸し返しといえないときは、ある程度緩やかに再逮捕が許される。