令状とは、逮捕、勾留などの強制処分の裁判書をいう。令状主義とは、このような令状によらなければ刑事上の強制処分が許されないとする原則をいう(憲法33条・35条)。
令状主義は、人権侵害の危険がある強制処分について、裁判官の事前の判断として令状を要求する主義であり、強制処分に対する司法的抑制の理念に基づく。
その例外として刑訴法が規定しているものは次の通りである。
1、現行犯逮捕(憲法33条、刑訴法 213条)緊急逮捕(刑訴法 210条)。
2、逮捕現場での捜索・差押え(憲法35条、刑訴法 220条、 126条)。
3、裁判所がなす公判廷内における捜索・差押え(刑訴法 106条)。
4、裁判所のなす検証(刑訴法 128条)
令状によらない捜索・差押には、現行法上(1)逮捕のための被疑者の捜索(220条1項1号)と、(2)逮捕に伴う証拠物の捜索・差押(220条1項2号、3項)がある。
また、解釈上プレインビューの原則等が認められるかが争われている。
刑訴法 220条1項2号は、司法警察職員が被疑者を逮捕する場合において必要があるときは、逮捕の現場で捜索・差押をすることができる旨を定めている。
これについては、逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が高いので、合理的な証拠収集手段として認められたものとし広く解する説もあるが、逮捕を完遂させるため、すなわち、被逮捕者の抵抗を抑圧し、逃亡を防止するためと同時に、現場の証拠の破壊を防止するための緊急の必要性から令状主義の例外として認められたものなので、より限定的に解するのが妥当である。
したがって、右捜索・押収は、令状による余裕がない場合に、被逮捕者の身辺について、武器、逃走具、その他の証拠を収集するために許されることになる。
本件では、必要な範囲を超えた捜索・押収がなされており、右証拠物は違法な捜索の過程中に発見、収集された証拠物であるといえる。
刑訴法 220条1項2号は、逮捕現場での捜索・差押えを認めている。条文の文言が「逮捕する場合」となっている以上、原則として、逮捕と捜索・差押え等は同時平行的である必要があると解される。
もっとも、この同時平行性も、例外的に不合理とみなされない範囲で膨らみえるが、その範囲が問題となる。
判例は、逮捕との時間的接着を必要とするけれども、逮捕着手時の前後関係は、これを問わないものと解すべきとし、これを適法とする。
しかし、被疑者の帰宅という偶然の事実で捜索の適否が左右されることになり不当であると考える。
本制度は、逮捕を完遂させると同時に、現場の証拠の破壊を防止するための緊急の必要性から、令状主義の例外として認められた制度であるので、厳格に同時平行性が要求されるものと解する。
逮捕に伴う捜索・差押えの場所的限界
刑訴法 220条1項2号は、「逮捕の現場」において逮捕に伴う捜索・差押えを認めている。
これについては、逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が高いので、合理的な証拠収集手段として認められたと解する説がある。
この説によれば、「逮捕の現場」とは、令状を請求すれば許容されるであろう相当の範囲となるので、同一管理権の及ぶ場所を意味することになる。
しかし、当制度は令状主義の例外をなすものであり、右説のように広く解するのは妥当でない。この制度は、逮捕を完遂させると同時に、現場の証拠の破壊を防止するための緊急の必要性から認められたものと解すべきである。
したがって、逮捕者に危害を加えるべき物、逃走具、手の届くところにある証拠をとりあげるのが趣旨なので、「逮捕の現場」も被疑者の身辺、すなわちその身体または直接の支配下にある場所を意味すると考える。
刑訴法 220条1項2号は、逮捕に伴う捜索・差押えを規定する。この「逮捕の現場」とは、要するに逮捕行為が行われた場所を意味すると解される。
しかし、本問の場合は、身体という「現場」には実質的な変更はないので、若干場所を移動した後に捜索・差押えをすることも許されると考える。
ただ、あまりに掛け離れた場所でかなりの時間経過後に行うことは、不適法である。
刑訴法 220条1項2号は、逮捕に伴う捜索・差押えを規定している。
この場合、逮捕行為が行われた場所に所在する物および人の身体がその対象となるので、捜索は許されるということになる。
しかし、もちろん押収すべき物の存在を認めるに足りる状況がなければならず(101条2項)、その状況とは、逮捕場所がどこであったか、被疑者とどういう関係の人物か、その当時の言動いかんなど諸般の状況から判断されることになる。