【92】補強の要否


刑訴法319条2項は「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠を要する旨を規定するが、これは憲法上の要請であろうか。「本人の自白」(憲法38条3項)に公判廷の自白も含まれるかが問題となる。

この点、判例は、319条2項は憲法の趣旨を一歩進めたものであり(創設規定)、憲法論としては公判廷の自白に補強を要しないとしている。公判廷での自白は強要のおそれがないことが理由となる。

しかし、そもそも補強法則の根拠は、自白があまりに信用されやすい証拠であるため、自白偏重による誤判の危険が高いことから、誤判を防止するために認められたものである。

とすれば、公判廷の自白であろうと公判廷外の自白であろうと誤判の危険の点で変わらないだから、憲法38条3項の「本人の自白」は当然公判廷外の自白を含み、刑訴法319条2項はその趣旨を確認したものにすぎない(確認規定)と解するべきである。