【97】排除法則の根拠、判断基準


排除法則の根拠・判断基準

違法な捜査方法によって発見された証拠物は、証拠能力を有するか。違法収集証拠の排除法則とは、違法に収集された証拠の証拠能力を否定する法則をいうが、排除法則には明文の規定がないためかかる法則を認め得るかが問題となる。

この点、供述証拠の場合は、収集方法の違法性が証明力を類型的に減少させるとも言い得るが、証拠物はたとえ押収手続きが違法であっても、物それ自体の性質・形状に変異をきたすことはなく、その存在・形状などに関する証拠価値には変わりのないことからすれば、たとえ収集方法に違法があっても証拠能力を否定する理由はないように思える。

しかし、かといって違法な収集方法で得た証拠をそのまま証拠として許容してしまえば、捜査機関は法の定めた手続きを遵守しなくなり、法が捜査に適正な手続を要求し(憲法31条)、また個人のプライバシー権を保障した趣旨(35条)が没却されてしまう。

そこで、次のような場合には排除法則を認めるべきである(判例同旨)。

(1)証拠物の押収などの手続きに、憲法35条およびこれを承けた刑事訴訟法218条1項の所期する令状主義を没却するような重大な違法があること(違法の重大性)

(2)これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合(排除相当性)

「違法の重大性」

排除基準としては、この二つの要件を重畳的に適用すると解される(重畳説)。しかし、その中心は「違法の重大性」である。

では、ここにいう「違法の重大性」とは何か。

判例は、操作の違法形態が被疑者の身体に対する有形力の行使である場合には「重大な違法」を認定するが、その他の場合(例えば捜索の違法、所持品検査の違法など)には違法宣言はするが重大な違法とは認定しない場合が多い。

証拠発見に先行する手続きに違法があった場合はどうか。

判例は、違法判断のあり方について「採尿手続きの適法違法については、採尿手続き前の一連の手続きにおける違法の有無、程度をも十分に考慮してこれを判断するのが相当である」として、先の手続きの違法が後の手続きに波及する場合のあり得ることを認めている。

すなわち、先行手続と後行手続が同一目的に向けられ、かつ後行手続が先行手続を直接利用してなされた場合には、後行手続は先行手続の違法を帯びる(同一目的・直接利用の基準)としている。

もっとも、証拠発見後の違法行為は考慮されないのが判例である。