合格講座 その14

新株の有利発行

280条の2 2項「特に有利なる発行価格」


○趣旨:有利発行をすれば既存の株式が下落する→既存の株主の利益が害される

○「特に」有利とは?
基準:時価の10%を超過←既存株主の利益保護と新株発行の必要性とを調和して考える

○新株発行の瑕疵があったとき、その効力は?
新株発行←人的・物的規模の拡大(組織法的要素)+取引的要素←取引安全の要請←無効原因を制限的二回する必要性

○瑕疵の態様
総会決議なしor通知・公告なし←無効原因と解して良いか?
総会決議なし、を無効原因とすることはない。
新株の発行は人的・物的基礎の拡大という組織的要素の面もあるが、他方で取引的要素ももっている。したがって取引の安全も考慮しなければならないからである。
通知・公告なし、は差止請求権の前提をなすものである。よって、のちの差止の理由がある場合に限り、無効原因になると解するべきである。

裁判所による差止請求を無視して発行した場合?
株主にとっては最後の手段であり、これを有効としたならば株主にはもはや打つ手はないといえる。取引の安全もさることながら、この場合は無効とせざるを得ない。

○新株引受権(新株を優先的に受けられる権利)
株主は原則としては引受権はない(280条の2 1項5号)←割当は代表取締役の権限
例外として当然に引受権を持つ場合もある。
例えば定款で譲渡制限がある場合(280条の5の2)


(問題)

『AからBに株式譲渡をしたが、名義がAに残ってしまった。そこでAに新株引受権が残ってしまった。そして、Aは時価より著しく低い価格で新株を取得し、Bは株式の市場価格の下落で損害を受けた。ここで、BはAに対し、どのような請求ができるか?』

会社としては株主名簿に載っている者を株主として扱えば免責される(224条)
これが例えば利益配当だったら不当利得返還請求権が使用できる。
では、新株引受が不当利得となるか?

Aの利得(安く株を入手)→Bの損失(入手できなかった)
Aの利得には法律上の原因がない
なぜなら、Aはすでに株式を譲渡してしまっており、名義のみである。
因果関係も認められる

よって、不当利得の要件がある

しかし、Aはたとえ定額といえども払込をなしていることから、株式自体の返還請求をすることはできない。
Bは残金についてのみ不当利得返還請求ができる。

「たとえ、低額であるにせよ、Aは株式の払込をして、その対価として株券を受け取ったのである。しかし、公平の原則から、Aが払い込んだ額を控除した残額についてはBに属する」


(問題)

『A株式会社は、株式買い占めにより乗っ取りを図るBに対抗する手段として、取締役会決議により、現経営者およびその一派の者に対して多数の株式を発行した。発行価額は特に有利なものではなかったが、それでもこの新株発行が無効となる場合があるか』

○まず、会社が乗っ取り屋Bに対抗するために新株を発行することは許されるか?
許されないと解する。
新株発行の必要性がないのに発行することになるからである。
新株発行を取締役会の権限とした趣旨は迅速な資金調達を可能とするためである。資金調達の必要性がないにもかかわらず、新株を発行することは上の趣旨に反する。

○次に、取締役が自己の関係者にのみ新株を割り当てる。これは許されるか?
多数説は280条の10「著しく不公正なる方法」に該当するとする。
取締役は誰に株を割り当てようと自由である(割当自由の原則)
しかし、多数派工作の目的から、取締役が自己の関係者にのみ割り当てるのは、発行方法において公正を欠くものである(会社支配の面で公正を欠く)
そこで、280条の10で発行の差止ができる。

この差止を無視して行われた発行の効力は?
発行の差止は株主にとって最後の手段であり、これが有効とされれば、株主には打つ手はない。取引の安全もさることながら、無効と解さざるを得ない。
 


取締役の責任

取締役の責任
会社に対しては損害賠償責任に加え、資本充実責任を負っている。

取締役の引受担保責任(280条の13)
割り当てた引受人が払込期日までに払い込みしなければ失権することになる。
で、払込がなされなかった株はどうなるか?
その分は登記できない。
払込がなされ、登記がなされた後、無能力による取消があった場合はどうなる。
→この分は、取締役が連帯して責任を負う。
*ちなみに、詐欺・強迫は、280条の12(一年以降は無効・取消は不可)
→会社債権者保護の観点からの規定である。


会社の設立

会社を設立する手続においては
(1)定款作成
(2)機関の成立(=発起人)
(3)構成員(=株式の割当)
が行われる。

ところで、社団の三要素は(1)定款、(2)機関、(3)構成員、である。

したがって、設立中の会社は法人格を有していないだけで、その実体は権利能力なき社団である。

そして、設立中の会社と設立された会社は、その内容は同一性を有しているのであって、会社は登記によっていきなり発生するのではない。

設立中の会社と設立後の会社とは同一性を有するのであるから、設立中の会社の法律関係はそのまま設立後の会社に承継される。
設立中の会社がむちゃくちゃなことをやったとしたら、その効果は設立後の会社が影響を被ることとなる。

よって、設立中の会社の権利能力の範囲が問題となる。

*発起人の行為は設立中の会社の権利能力の範囲しか会社に帰属しない(権利能力制限説)