(問題)
『株主の議決権の行使の機会を保障する商法上の制度についてのべよ』
○議決権の意義の重大性
○厳格な招集手続
・「支払地」の意味○審議の保障
・「緊急動議」
・237条の3(説明義務)○決議取消の訴え(247条)
・232条の2
・237条の2(検査役の選任)
・「議決権の代理行使」
・招集権者→各取締役(259条)○一部取締役への招集通知漏れ
・招集期日→一週間前(259条の2)
*全員の同意があれば手続不要(259条の3)←業務執行の迅速性の要請(株主総会とは違う)
(無効説)○監査役への招集通知漏れ
→取締役会のような少数者の会議体においては取締役全員に発言の機会を与えなければならず、また一人の説得的発言が他の取締役に影響を及ぼす可能性があり、しかもその影響を図ることも困難であるから、決議の瑕疵を治癒することはできない。
←会社関係を巡る法的関係の安定性を害することになる
→しかし、業務執行権という広範・強大な権限を取締役会という会議体に与えた趣旨→一人が欠けてもその一人の意見によって結論が変わったかもしれない→ゆえに無効である
取締役の業務執行権は広範かつ強大である
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これが適正に行われないと会社・株主の利益が害される
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そこで、法は監査役制度(274条)を設け監査役に業務監査権をもたせた
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監査役は業務に精通していることが必要
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ゆえに「監査役の取締役会への出席」(260条の3)、「監査役への招集通知」(259条の2)を特に法で規定した
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これを考えると、監査役に対する招集通知漏れは重大な瑕疵と言わざるを得ない
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これを欠く決議は無効である。
取締役と会社との関係は委任関係にある。○では、その「報酬」の範囲は如何?
取締役の報酬は業務執行の一内容。よって本来は取締役の権限である。
しかし、それではお手盛りの弊害の危険がある
そこで、法は株主総会の承認を要するとした。
・「給与」=職務執行の対価→ゆえに、給与が含まれることは明らか監査役の報酬もやはり定款または株主総会で決める(279条)・「賞与」はどうか?
←利益分配としての性格→支給の有無、時期、額が定まっていない→ゆえに給与とは違う
→しかし、職務執行の対価の一種であるし、これを報酬に含めなければ269条の趣旨が没却される。よって、「報酬」に含まれる・「使用人としての給与」=使用人としての給与
←使用人としての給与は使用人の給与体系にしたがって支払われる
→しかし、269条は「報酬」に限定を加えていない
→取締役が受ける職務執行の対価を広く株主総会の決定に付し、お手盛りの弊害を防止するものであるから、使用にとしての給与を除くべきでない。よって報酬に含まれる。・「退職慰労金」=取締役が退職した場合、これに対して支給される金銭
←退職時に支払われるので職務執行の対価とはいえない。またお手盛りの危険もない
→しかし、退職慰労金は功労に報いる趣旨をも兼ね、在職中の職務執行の対価として支払われるのだから、全体として「報酬」に含まれる
→また、退職慰労金を取締役会で決定できるとすると、退職する当該取締役に支給する退職慰労金の額が、自己の退職時の慰労金額と密接な関係があるので、お手盛りになってしまう。
よって、「報酬」に含まれる。
その趣旨は、取締役のそれとは違う←取締役の規定(269条)をあえて準用していない○個人の支給額まで決しなければならないか?
なぜかというと、取締役会が監査役の報酬を決定し得るなら、監査役の報酬をもってコントロールしてしまうおそれがある。それでは適切な業務監査権が行使されなくなる。
よって、279条で、定款または株主総会で決めると定めた。
取締役の場合は、取締役全体への総支給額さえ決めておけばお手盛りを防止できる。個人のプライバシーを侵してまで個々の支給額を決する必要はない(判例同旨)。
これに対して、監査役の場合は、総会は個々人の受け取る報酬額まで決定すべきものと解する。
なぜなら、監査役は、取締役の職務執行を監査する者であるから、総会が単に報酬の総額を決めて、監査奴個人への具体的な支給額の決定を取締役会に委ねたのでは、監査役の職務の公正が損なわれるおそれが生じるからである。
大きく分けて二つある『取締役資格に関する商法上の制度とは』
・資本充実責任
・損害賠償責任
→会社に対する
→第三者に対する266条1項5号が一般的な規定=法令違反行為は損害賠償責任を生じうる
例;取締役は他の取締役を監督する義務がある(260条)→善管注意義務ないし忠実義務
例;266条の3で第三者に対する責任を定めているが、これには株主も含まれる
所有と経営の分離→取締役の業務執行の適正→そのような能力を有する者でなければならない○では、女性に限った場合は?
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広く人材を確保する必要←取締役を株主に限る定款を法で禁止(254条2項)
NG、性別限定は許されない(広く人材を確保する必要から)○日本人に限った場合は?
OK、日本人という範囲は相当に広いのでなお広く人材を求めうると解される。また、かような限定を行う合理的理由もある(外国資本による経営支配の排除)【追記】
小塚さんよ、こんなもんが理由になるかよ(笑)○取締役資格に関してはまだ他に規定がある→254条の2(欠格事由)
ちなみに、判例はこの件でだいぶ揺れた。取締役の被選任権の制限か、株主の取締役選任権の制限か、で理論構成が揺れた。
取締役は業務執行を適正に行使しうる能力が必要
未成年はどうだろう?→能力のある者もある→取締役資格はある
破産宣告を受けた者はどうだろう?→適正行使の控制のため、取締役には厳格な賠償義務がある。破産者には賠償能力がない(ちなみに、監査役にもなれない280条→254条)
会社の取引先を奪うなどして、会社の利益を犠牲にし、自己又は第三者の利益を図る危険性がある。そこで、法はかかる規定を置いた(264条)
判例・通説は「計算で」(利益・損失の帰属のこと)と解している。○「営業の部類に属する」とは?
なぜなら、264条は会社の利益の保護が趣旨である。「名義」では会社に損害は生じない。「計算」ではじめて損害がでる。
現に行われていなくとも、定款の範囲内で会社が将来行う可能性がある営業行為であれば、範囲に含まれると解する○「重要な事実」
*では、紳士服の会社の取締役が婦人服の会社をやるとすれば?
→取引先を奪うなど会社の利益を害するか否かで決すべき
取締役会の承認を得るためには、その競業の内容について取締役会に開示しなければならない
つづきは次回・・・・・