合格講座 その6

(問題)

『取締役の第三者に対する責任(266条の3)についてのべよ』
取締役の業務執行権は極めて広範かつ強大である。
それが適正に行使されないなら、会社のみならず第三者に多大な損害を生ぜしめるおそれがある。
しかるに不法行為をもって責任を追及するのは現実には困難である(損害についての故意過失、損害の範囲・額を立証する必要があるので)
そこで、法は取締役に対して多大な責任を負わせた(法定責任説)

【追記】

これに対して、取締役の責任が極めて重くなるので、それを軽減するべく不法行為の特則として規定された、と解する説もある。
大企業については、こちらの説の方が説得力があるが、日本の企業の大部分は中小零細企業なのであって、法定責任説の方に説得力がある。
判例は、結局法定責任説でいくことになったが、自民党商法部会は責任軽減を目指しているようだ。
○「悪意・重過失」の内容
「任務懈怠」についてか?それとも「損害の事実」か?
つまりさぼることそれ自体か?そこから生じるべき損害の発生のことか?
266条の3の趣旨

適正な職務執行の要求

任務懈怠の防止

ゆえに悪意の内容は「任務懈怠」で足りる
*また、加害の点に悪意重過失を要求していると解すれば、軽過失について責任を負わずにすむことになる。これは民709条の趣旨を没却する
○「損害」の意味
直接損害に限られるか、間接損害まで含むのか?
*「直接損害」支払い見込みのない手形で商品を仕入れるなど、会社の損害を経由せずに、第三者が取締役の行為で損害を受けた場合
*「間接損害」取締役の違法な行為(放漫経営など)が会社に損害を及ぼし、そのために会社が資力を失った結果、第三者が損害を受けた場合
266条の3を債権者代位権の特則と解する立場→間接損害に限る
266条の3を不法行為の特則と解する立場→直接損害に限る

266条の3を法定責任であると解する立場(判例)
→「取締役の任務懈怠行為と第三者の損害との間に相当因果関係がある限り、直接損害であろうと、間接損害であろうと、取締役に対して損害賠償責任を課したものである。」

○「第三者」に株主をも含まれるか?
肯定←取締役の職務権限が適正に行使されなければ株主もまた損害を被ることは第三者と変わることはない。任務懈怠行為と損害との間に相当因果関係が認められる限り、これは肯定すべきである。

【追記】

今の266条の3の中心論点は、直接損害か間接損害かというところから、第三者の範囲をどこまで広げられるか、という方向に向かっている
○ここでいう「取締役」に表見取締役を含むか?
例:株主総会の選任決議を経ていない取締役(登記済み)

この場合、有効な選任決議を経ていないので、たとえ登記がなされていても取締役ではない。

取締役でないなら「任務」懈怠はないのだから、266条の3の責任は存在しないのではないか?

しかし、この表見取締役の個人的信頼をもとにして取引関係に入る場合もあり、保護の必要性がある

そこで、14条(不実登記の責任)を類推適用することを考える

14条はいわゆる権利外観法理を規定し、不実登記をした者は不実なることをもって第三者に対抗できない旨を定めている。

確かに不実の登記をなしたる者は会社であって当該取締役ではない。よって、14条の「適用」はない。

しかし、取締役が不実登記をすることを容認するなどの帰責性があれば、不実登記なることを第三者に主張することはできないと考える。

よって、14条を類推適用して、表見取締役は登記の不実を主張して自己が取締役でないことを第三者に主張できないと解するべきである。
○退任登記未了の退任取締役は266条の3の責任を負うか?
『Bが真実甲会社の取締役であった。Bは当該会社を退任したのであるが、代表取締役が辞任登記を行わなかったので、Bの存在を誤信した第三者が損害を受けた。Bの責任や如何』
14条は使えるか?
(1)第三者保護の必要性はある
(2)しかし、帰責性については直ちに認めるわけには行かない。外観作出は会社が行ったからである。もっとも、会社が退任登記を行わないことを知りながら、Bが漫然と放置していたといった事情があるときは、Bに帰責性を認めて類推適用を認めるべきである。
○代表取締役の放漫経営で第三者が損害を受けたとき、平取締役の責任や如何?
取締役は取締役会の構成員として監視義務がある(260条1項)。
では、その監視義務は会議の議題に限られるのか否か。その範囲が問題となる。
取締役の業務執行権は広範かつ強大である。そこで取締役の職務の適正のため、法は取締役会に監視義務を設けた(260条1項)。

個々の取締役には明文はない。しかし、取締役会のメンバーとして、やはり監視義務があると言わざるを得ない(善管注意義務の前提としてこれを認める)

取締役は取締役会に上程されない事項についても、その執行が適正になされるよう監督しなくては法が関し義務を設けた趣旨を没却することになる。

もっとも、非常勤取締役や、取締役会を無視されている場合等の場合には、酷であるという批判もある。

しかし、各取締役には個別に招集権があるのだから(281条)、その批判はあたらない。不合理な場合は重過失の認定でカバーすればよい。

そこで、たとえ上程事項でなくても、取締役は他の取締役の行動に監視義務があると解すべきである(判例)。

問題

『取締役の会社に対する損害賠償責任の追及を実効あらしめるために商法上いかなる配慮がなされているか』

○総論

266条の趣旨=業務執行権の適正→厳格な責任を規定(例;連帯責任、損害額の推定)
○各論
免責の困難さ(266条5項)→総株主の同意が必要
代表訴訟(267条)→会社(代取)・取締役の馴れ合いで訴えが出ない場合
←会社と取締役間の訴えの代表(275条の4)←代取ではなく監査役がやる
←訴訟に株主を参加させる(268条2項)
←弁護費用は会社持ち(268条の2)

問題

『取締役の一部に対する招集手続を欠き、その者の欠席の下で行われた取締役会決議の効力について、株主の一部に対して招集通知を欠いた場合の株主総会の効力と比較しながら論ぜよ。
また、それぞれの決議が、重要な財産の譲渡ないし営業譲渡についてのものであった場合、決議に基づいた代表取締役の行為の効力について論ぜよ』