「取締役に対し〜あたかも代表権のあるがごとき名称を附したとき、善意の第三者に対抗できない」○ここで問題となるのは、12条との関係
その趣旨は、取引の安全=権利外観法理
「登記すべき事項は登記および公告の後にあらざれば、これをもって善意の第三者に対抗できず」○で、取締役でなく従業員に対して代表権があるがごとき名称を附した場合は?
↓
12条は登記があるときは登記をもって善意の第三者に対しても対抗
↓
しかし、現実にはそのような名称に責任がなければ取引の安全が害される
↓
262条は12条の例外として定められたもの、と解することで回避するしかない。
さもないと、262条の適用場面は極めて限られてしまう
法は、代表権がある者は代表取締役以外に支配人を規定(38条)○262条の「第三者」は善意のほかに無過失まで要するか?
例:支店長、営業所長これに対しては、取引の安全のため、表見支配人という制度(42条)がある。
これも、262条と同じく12条の例外規定
不要と解する。
なぜなら、262条は外観法理(12条の例外として規定)であるが、同じ権利外観法理規定である民94条2項では善意とのみなっている。
で、営業部長等の名称を使用人に附した場合であるが、これには42条類推適用説と262条類推適用説がある。ま、これはどっちでもいけど、42条の法が営業の主任者たる文言に適しているといえるかな
商業登記の効力について、もう少しまとめておく
商業登記とは、商人に対する一定の事項を商業登記簿に記載してする登記を言う。商行為=取引の迅速性・大量性〜相手先を調査する煩
↓
商業登記制度による公示
↓
取引の迅速性・安全性を確保
通常の登記事項については、登記と実体上の効力発生とは無関係であり、本来ならばその効力を何人にも対抗できるはずである。(1)登記前の効力〜消極的な公示力
一定の事項が成立し、または存在していても、それが登記すべき事項であるときは、登記がなければ、登記事項である法律関係の当事者は、これを善意の第三者に対抗し得ない(12条前段)(2)登記後の効力〜積極的な公示力
一定の事項の成立存在につき、登記後は、当事者は善意の第三者に対しても登記事項を対抗し得る(12条後段)(3)不実登記の効力
不実の登記は本来無効であるが、登記を信頼した者が不測の損害を受けるおそれがあるので、14条は禁反言の法理に基づき、これら善意の第三者を保護している。『Z社の新代表取締役Yが、選任登記未了の間にXに手形を振り出した』*なお、登記をしなければ、善意のみならず悪意の第三者にも対抗し得ないことを「商業登記の対抗力」という。
例:商号譲渡の登記(24条2項)、合名合資会社の退社登記(93条・147条)<善意悪意を問わない
○XがZ社の責任を問うことは許されるか?
代表取締役は登記事項であるのに、登記がないのだから、XはZ社に責任を問うことはできないのではないか問題となる。
しかし、これは認められる。なぜなら、12条は会社から善意の第三者に対して未登記の事実を主張することを制限したもので、第三者から会社に対してその事実を主張することまで制限するものではないからである。
逆にZ社がYは取締役でない、と主張することはXが善意であればできないことになる。これは12条の効力。
○XがY個人の責任を追求した場合、12条により、代表取締役たることをXに対抗できないとして、手形法8条によりY個人が責任を負うか?
12条は取引上重要な事実を公示させ、第三者が不測の損害から守る趣旨であるから、第三者がその事実を期待している以上、代表取締役の手形行為として会社に効力を帰属させなければ不測の損害はありえず、12条による保護の利益がない。
よって、Yの責任は否定される(判例)。
監査役とは業務執行を監査し、業務執行を適正ならしめるためのもの「監査役とは、株主総会によって選任された者であって、商法特例法上の子会社の場合を除き、会社の業務執行一般を監査する機関(274条1項)であり、特例法上の子会社の場合には、会社の計算に関する事項を監査する機関である」
監査には業務監査と会計監査とがある。
小会社は会計監査のみである(特例法22条以下)
大会社では、業務監査まで認められ、加えて会計監査人が監査を行う(特例法2条〜21条)
中会社では、会計監査人の制度はない。
*小会社に業務監査まで認めると、かえって円滑な業務執行を妨げる(内紛のもと)。株主の業務監査にまかせておけばよし。『監査役の権限を規定した条文を指摘せよ』所有と経営の分離の結果、取締役の権限の強大化が進行する。
取締役の職務が適正に行使されなければ会社ないし株主の利益が害される
そこで、十分な監査を行わせるため、会社の必要的機関として法は監査役制度を設けた。
○監査の範囲
274条、274条の3(子会社に対する権限)○監査の実効性を確保するための制度〜監査役は業務の内容に精通しなければならない
274条2項(業務報告・・・調査権)○監査役の監査権限〜妥当性監査まで及ぶか?
260条の3(取締役会に出席・・・招集通知も必要(259条の2))
281条・281条の2(計算書類等)〜主に監査役の仕事はこれ
275条(総会に報告)
279条(監査役の報酬)
妥当性までは及ばない
監査役は業務執行権を有するものではなく、取締役のみが有している。
したがって、取締役がどのように業務執行権を行使したかについては、取締役の裁量の範疇であって、その妥当性を監査役が判断するのは越権行為である。
(また、監査役に干渉を許すと、かえって円滑な業務執行を害することになる)
反対説もある>275条(調査報告義務)に「著しく不当なる事項」とある。これは、監査役が妥当性監査を行うことを前提としている、というのである。
反論>単なる「不当」ではなく、「著しく不当」であれば、善管注意義務違反の問題であって、法令違反−違法性の問題である。妥当性監査まで認めたものではない。複数監査−監査を分担して行うことができるか?
監査役の対象事項は膨大かつ複雑であり、監査役一人では十分な監査を行い得ない場合がある。
そこで、各監査役が分担して職務を行うことは認めなくてはならない。
では、分担制の下で、監査役の責任の範囲はどこまでか?
取締役の責任は、266条1項3号4号は無過失責任、5号は過失責任
では、監査役の場合は?・・・・・277条「任務を怠りたるとき」=過失責任会社と監査役との関係は委任であって善管注意義務を負う。
分担外の場合でも、善管義務をつくせば他の監査役がなした監査事項について不十分な監査であることが発見できた場合は過失ありといえる。
○総論
業務執行権は広範かつ強大である。○各論
よって、これは適正に行使されなければならない(会社および株主の利益)
法はそのために監査役による監査役制度を規定した。
しかし、せっかく監査役制度を設けても、監査役が十分な監査を行えなければ、なお取締役による適正な業務執行権の行使が期待できなくなる。
よって、監査役に厳格な責任を負わせ、監査の実効性を確保させることにした。
・まず会社に対する責任(277条)「怠りたるとき」=過失責任→善管注意義務
問題なのは、監査役に妥当性監査まで要求されるか?
なお、監査役が損害賠償責任を負わされる場合は取締役との連帯責任となる(278条)・次に、第三者に対する責任(280条→266条の3 1項)
「悪意・重過失」の内容(損害の発生?任務懈怠?)
等々
監査役は平成9年の本試験に一行問題として出た。このときは、大会社・中会社・子会社それぞれの監査役の権限の違いについて一言も触れなかったので轟沈してしまった(涙)けっこう悔しい。