合格講座 その9

(前回の復習)

監査役の責任

○設立後の責任
・会社に対する責任=>277条「任務を怠るとき」
→過失責任;実質的理由として、実際に職務を行っているわけでもないのに監査役に無過失責任は酷だ
・第三者に対する責任=>288条→266条の3
*会社に対する責任は266条の3を準用していない
*ついでに、280条がどんなものを準用しているかチェックしておくこと
(例;266条5項総株主の同意による免責)
○設立段階での責任
・195条(発起人・取締役・監査役の連帯責任)

株式

○株式とは
会社の持ち分
細分化された割合的単位(社員たる地位)
○株式の有する権利
自益権
社員が会社から経済的利益得ることを目的とする権利
(例;利益配当請求権(293条)、残余財産分配請求権(425条))

共益権
経営参加権
(例;議決権(241条)、決議取り消しの訴え(247条)、株主の代表訴訟(267条))

社員権否認論
株主は自益権および共益権を持つ、と解する立場を「社員権論」という
これに対し「社員権否認論」という立場もある。
すなわち、社員の権利は自益権のみである。共益権は、社員たる地位に基づいて認められるもので、株式の内容をなすものではない、というものである。


額面株式と無額面株式

株券の券に額が記載されている株式、つまり一株の金額が定められている株式を額面株式
定められていない株式を無額面株式という。
平成13年の改正で、額面株式は廃止され、無額面株式で一本化した

株式の種類(222条)

会社は内容を異にする株式を発行できる。

優先株=他の株主に先立って利益配当請求権を行使できる株式
劣後株=利益配当請求権の行使が他の株主に劣後する株式

*優先株について議決権なき株式(242条1項)とすることができる。
利益配当を優先的に配当する、ということは、既存の株主の利益を損なうことになる。その代償として議決権なき株式とし、バランスをとったものである。

株主平等の原則

○定義:
株主平等の原則とは、株主は株主としての資格に基づく法律関係については、原則としてその有する株式の数に応じて平等の取扱を受 けるとする原則である。
○根拠:
『実質的根拠』
株主の地位が均等な細分化した割合的単位の形をとり、各株式の包含する権利が同一であることから、株主平等の原則は根拠づけられる。
『形式的根拠』
実定法上の明文規定はないが、株主の主要な権利である利益配当請求権(293条)、残余財産分配請求権(425条)、議決権(241条1項)に関する明文 は、株主平等原則を前提とするものとみられる。
○内容:
(1)内容的平等=各株式の内容が原則として同一なこと
例:議決権(241条1項)、利益配当請求権(293条)

(2)取扱上の平等=内容が同一なら取扱もまた同一なこと
例:株主総会決議や取締役の業務執行行為で株主の不平等待遇を定めても無効

『法律上の例外』
(1)数種の株式(優先株・劣後株、転換予約券つき株式、議決権制限株式等々)
(2)共益権行使の制限
(3)単元株
(4)端株
『解釈上の例外』
(1)日割配当
(2)実質的な利益配当
(3)株主優待制度

○こういう扱いは許されるか
『一般株式に対して無配の株式会社が、一万株以上の大株主に対して損失補填の金銭を贈与する契約を結んだ』
その実質が利益配当であるなら、それを不平等に取り扱うことは許されない。
*では、かような取扱をしてしまった場合、その後の処理−266条、株主に対しては?・・・宿題
『従業員株主が従業員以外の者に株式を譲渡する場合にのみ、取締役会の承認を要する旨を定款で規定した場合』
株式会社は本来広く公衆から巨額の資本を結集して大規模な事業を営むために認められた制度である。
そのためには(公衆から資本を集めるためには)いつでも投下資本の回収を保障する制度が必要である。
そこで、204条1項は、株式をいつでも譲渡しうるものとした(株式譲渡自由の原則)。
もっとも、制限可能な例外もある(204条1項但書)。
←上場会社は駄目。小規模な同族会社、閉鎖的会社。
なぜなら、会社にとって好ましくない者が会社の経営に参与することを防止する必要があるからである。

(前回の宿題)

『大株主に対してのみ利益配当を行う場合、しかも、それが「たこ配当」だった場合』
配当可能利益がなければ配当できないことになっている(290条)
○さて、この場合は、どのような条文があるか。
会社債権者はこれを返還せしむることができる(290条2項)
類似の規定に民423条(債権者代位権)があるが、これは無資力要件があるので、使いにくい。
会社債権者保護としては不十分である。
よって、法は債権者保護のためこの規定を設けた。

当然、会社自身、株主に対して不当利得返還請求権が行使できる。

○株主以外に対してはどうか。
取締役は会社に対して損害賠償の責任がある(266条1項1号)
ところで、266条5項は総株主の免除の同意を規定するが、これは266条1項1号にも適用できるか?
駄目。会社財産が減少、会社債権者を害することになる。
○取締役が上の賠償をなしたとき、取締役は株主に求償できるか?
悪意の株主に対してのみできる(266条の2)
本来、求償は可能なのだが、自ら違法配当をしておきながら、なお善意の株主に対して求償を認めるのは妥当でない。よって、266条の2が設けられた。
○違法配当(たこ配当)の点はこれくらいにして、株主を持株で差別した点は?
293条は各株主が持株数に応じて利益配当を受ける旨を定める(株主平等の原則)
ゆえに、金銭の交付は無効となる。
あとの処置は290条の場合と同じ。


もう一つの宿題は280条(取締役に関する規定の準用)の準用条文の確認であった。
株式譲渡
204条1項=株式譲渡の自由
但書=定款による制限