第三編 訴訟の開始

第一章 訴えの意義

◎訴え
原告が裁判所に対し、その請求を提示して一定内容の判決を要求する要式の訴訟行為

○給付の訴え
被告に対する給付請求権を主張して、給付判決を求める訴え
○確認の訴え
特定の権利関係の存在または不存在を主張して、確認判決を求める訴え
○形成の訴え
権利関係を変動させるための法律要件を主張し、その変動を宣言する判決を求める訴え
○形式的形成訴訟
裁判により権利関係の変動を生じるが、実体法に形成要件の定めがなく、裁判所が当事者の主張に拘束されず裁判する訴訟
【論点】
境界確定の訴え

隣接地相互の境界が争われる場合に判決による境界線の確定を求める訴えがなされた場合、裁判所は当事者の主張・立証のない確定をなすことができるか。境界確定の訴えの法的性質が問題となる。
一筆の土地の境界は、公的な物であり、当事者が自由に処分できる性質の物ではない。
よって、境界確定の訴えは形式的形成訴訟と解するべきである。
形式的形成訴訟では裁判所は公益的見地から権利関係を確定するので、処分権主義・弁論主義の適用に制限がある。また証明責任法理の適用はない。
したがって、たとえ当事者の主張・立証がなくとも裁判所は自由な心証に基づいて境界を確定できる。

第二章 訴えの提起とその効果

◎訴えの提起の方式 @ 原告が一定の事項を記載した訴状を裁判所に提出

A 裁判長が訴状を審査する
 ←不備があれば補正を命じ(137条1項)、補正されない場合は訴状却下命令(139条)

B 裁判所が訴状を被告に送達する(138条1項)。訴状の送達にあたり、期日を指定し、当事者を呼び出す(139条)
◎訴状の記載事項
@ 当事者、法定代理人

A 請求の趣旨・原因
←(請求を特定するのに必要な事実(法133条・規則53条1項))
請求の趣旨
訴えによって求める判決主文の簡潔かつ明確な記載
請求の原因
訴えによる請求を特定の権利主張として構成するのに必要な事実


◎訴訟係属
事件が裁判所によって審判される状態
時期
訴状が被告に送達された時(通説)
効果
@ 同一の訴えが提起できなくなる(二重起訴の禁止)

A 訴訟参加・訴訟告知が可能となる

B 関連した請求の裁判籍が生じる

C 訴えの変更・反訴・中間確認の訴えが可能となる


◎二重起訴の禁止
訴訟係属中の事件については、当事者は重ねて別訴での審判をもとめることはできない(142条)
趣旨
@ 被告の二重応訴の煩を防止

A 判決の矛盾・抵触の防止

B 審理重複による訴訟不経済を防止
要件
@ すでに訴訟係属があること

A 事件が同一であること(=当事者の同一と訴訟物の同一)
【論点】
債権者代位権に基づく甲の丙に対する貸金返還請求訴訟中、債務者たる乙が丙に対して貸金返還請求の別訴を提起することは許されるか。二重起訴にあたるか否かが問題となる。

確かに、債務者と債権者は別の人格で、当事者は同一ではない。
しかし、そもそも二重起訴の禁止が定められたのは、判決の矛盾抵触の防止を理由の一つとする。
しかるに、債権者代位権を行使する債権者は訴訟担当者であり、既判力は債務者に及ぶ。
とすれば、債務者が別訴を提起することを許せば判決の矛盾抵触が生じるおそれがあり、142条の趣旨を没却する。
よって、この場合は、二重起訴にあたるとして、別訴は許されないと解するべきである。
【論点】
XのYに対する債務不存在確認訴訟(甲訴訟)中に、YがXに対して当該債務の支払請求訴訟(乙訴訟)を提起した。これは許されるか。二重起訴の禁止にあたるかが問題となる。

確かに甲訴訟と乙訴訟では訴訟物が異なる。
しかし、甲訴訟でXが勝訴すると、債務の不存在が既判力で確定し、他方、訴訟でYが勝訴すると、給付請求権の存在が既判力で確定することとなり、判決が矛盾抵触してしまう。
よって、二重起訴にあたるとして、乙訴訟は許されないと解するべきである。
【論点】
相殺の抗弁
○抗弁先行型
前訴で相殺の抗弁を提出しておきながら、その自働債権に基づき給付訴訟を提起することは許されるか。

(イ) 類推適用否定説
相殺の抗弁は防御方法であり、通常は予備的抗弁であって判決で判断されるかどうか不確定ゆえ、142条を類推適用すると、被告の防御権を害する。
(ロ) 類推適用肯定説
相殺の抗弁には既判力が認められるから、判決の矛盾抵触の生じるおそれがある。また同一請求につき二重応訴を強いられる相手方の負担や訴訟経済を考慮すべきである。
○抗弁後行型
自ら前訴で訴えをもって主張した債権を自働債権として後訴で相殺の抗弁を主張することは許されるか。

(イ) 類推適用否定説
相殺の抗弁は防御方法であり、通常は予備的抗弁であって判決で判断されるかどうか不確定ゆえ、142条を類推適用すると、被告の防御権を侵害する。
(ロ) 類推適用肯定説(判例)
相殺の抗弁には既判力が認められるから、判決の矛盾抵触のおそれがある。また同一請求につきに重応訴を強いられる相手方の負担や訴訟経済を考慮すべき。
抗弁後行型では、前訴の訴求債権は訴訟物であるから必ず審理・判断されるので、後訴での相殺の抗弁の主張は二重審理として許すべきではない。
◎時効中断効
他に、訴えの効果として実体法上特別の効果が認められる場合があるが、特に重要なのは時効中断効(民147・149条)である。
根拠
起訴によって、権利関係が判決の既判力により確定され、従来係属した事実状態が法的に否定されることになる。
時期
訴状提出時とするのが原則である(147条)
←訴状送達までの時間が原告に不利に働くのを防ぐため


第三章 審判の対象

訴訟物
訴訟上の請求=審判・判決の対象であり、本案判決の主文で判断される事項の最小基本単位
【論点】
訴訟物をどう捉えるか

(イ) 旧訴訟物理論
← 実体法上の権利を訴訟物とする

(ロ) 新訴訟物理論
← 給付訴訟では一定の給付を求める地位、形成訴訟では形成判決を求める法的地位を訴訟物とする
相違点
・登記回復請求訴訟
・損害賠償訴訟
・不法行為に基づく損害賠償訴訟と債務不履行に基づく損害賠償請求
・賃貸借契約終了による明渡請求訴訟(所有権に基づく返還請求と債権に基づく返還請求)
・民法770条1項の離婚原因
・手形訴訟
等々


第四章 訴訟の開始・対象等の自己決定

処分権主義
私法上の権利・法律関係の紛争につき
@ 民事訴訟による紛争処理を求めるか
A どの範囲で紛争処理を求めるか(不告不理の原則)
B 訴え提起後も終局判決による紛争処理を求めるか

を当事者にゆだねること
根拠
私的自治の訴訟法的反映
制度趣旨
@ 原告の意思の尊重
A 被告に防御の範囲を明示する
B 当事者に対する不意打ちの防止
申立事項の特定基準
@ 訴訟物
A 権利救済の範囲(給付または確認または形成)・順序
B 権利救済の範囲(ex.金1000万円を支払え)

を基準に決定する
【論点】
一部認容判決の可否

原告の合理的意思に反せず、かつ当事者の不意打ちにならない場合には許される(判例)
この場合は原告の合理的意思を尊重し、当事者に対する不意打ちを防止できるという処分権主義の趣旨に合致するから

【論点】
金銭債務不存在確認訴訟における一部認容判決の可否

(イ) 債務者が原告となって債権者を被告として50万円の債務は存在しないとの確認訴訟を提起(債務総額は50万円)した場合(訴訟物は50万円の債務の不存在)
[結論] 「10万円を超えては債務は存在しない」との判決は許される

(ロ) 債務者が原告となって債権者主張の50万円の債務のうち10万円の債務の存在は認めるが、10万円を超える部分は存在しないとの確認訴訟を提起した場合(訴訟物は40万円部分の債務の不存在)
[結論] 「50万円中20万円を超えて債務は存在しない」との判決は許される

(ハ) 債務者が上限を示さず債務は10万円を超えて存在しないとの提起した場合
[結論] 「50万円中20万円を越えて債務は存在しない」との判決は許される
請求の趣旨・原因その他の資料により上限金額50万円と特定しうるから

一部請求
金銭その他の不特定物の給付を目的とする債権に基づく給付訴訟について、原告が債権のうちの一部の数額についてのみ給付を申し立てる行為を一部請求と呼ぶ
【論点】
数量的に可分な給付を目的とする債権の一部を請求した場合、確定判決後に残額請求できるか

[結論] 原告が一部であることを明示すれば、訴訟物は分割請求された一部の債権となるので、前訴判決の既判力は後訴に及ばず、残額請求は原則として認められる。
もっとも、信義則により認められない場合もある。

[理由] 
@ 処分権主義は請求の範囲の決定を当事者の意思に委ねている
A 損害賠償請求訴訟では試験訴訟を認める必要がある
B 被告が紛争の一回的解決、二重応訴の煩を避けたいなら反訴を提起すればよい(明示があれば反訴提起の機会あり)
【論点】
一部請求と時効中断の範囲

[結論] 一部との明示があれば、その部分のみが時効中断する(判例)
【論点】
一部請求と過失相殺

[結論] 損害額全額を設定した上、その全額(一部請求の外側)で過失割合による減額をすべき(判例)
[理由] 自己の過失を考慮して請求し得る額を一部請求するのが原告の意思
【論点】
後遺症による損害の賠償請求

[結論] 後遺症が判決確定後に生じた場合、結果的には不法行為によって生じた全損害のうち一部しか請求されなかったことになる。そこで一部請求の問題と考えるべき(判例)

(イ) 後遺症が予期できないものであった場合
[結論] 明示がある場合と同視して残部請求を認めるべき
[理由] 予期できない以上、前訴において後遺症損害を請求から除外していたことが明らかだから
(ロ) 後遺症の事実は分かっていたが、具体的な金額がわからなかった場合
[結論] 明示ある場合と同視して残部請求を認めるべき


第五章 訴訟要件

第一節 総説

訴訟要件
本案判決をするのに必要な要件
趣旨
本案判決を下しても紛争解決をなしえない訴えをあらかじめ排除し、訴訟制度の能率的運営を図る
種類
(1) 請求と当事者が我が国の裁判権に属すること
(2) 裁判所が当該事件につき管轄権を有すること
(3) 両当事者が実在すること
(4) 当事者が当事者能力を有すること
(5) 当事者が当事者適格を有すること
(6) 訴え提起・訴状送達が有効なこと(当事者・代理人が訴訟能力・代理権を具備していること)
(7) 原告が訴訟費用の担保提供の必要なきこと、または必要な担保を提供したこと
(8) 同一事件につき他の訴訟係属がないこと(二重起訴の禁止)
(9) 再訴の禁止(262条2項)、別訴の禁止に触れないこと(人事訴訟手続法9条)
(10) 訴えの利益があること
(11) 請求の併合や訴訟中の新訴提起の場合、その要件を具備すること
【論点】
訴訟要件の判断前に本案棄却の結論が出た場合

原則→訴訟要件の有無を判断してから本案判決を下すべき。直ちに請求棄却判決をすべきではない
[理由] 訴訟要件は本案判決の前提要件

例外→被告の保護を主たる目的とする訴訟要件については、直ちに請求棄却判決をすべき
[理由] その方が被告の保護になる
職権調査事項
当事者の主張の有無を問わず、裁判所が職権でその存否の調査を開始しなければならない事項
抗弁事項
被告の申立(抗弁)をまって裁判所が調査をすればよい事項
[例] 仲裁契約の不存在、訴訟費行の担保の提供(75条)



第二節 訴えの利益

訴えの利益
本案判決の必要性と実効性をここの請求内容について吟味するための要件
要件
@ 法律を適用して判断しうる具体的な権利関係の存否の主張であること
A 起訴が禁止されていないこと(142条、262条2項、人事訴訟手続法9条)
B 当事者間に訴訟を利用しないという特約のないこと
C 通常の訴え以外の簡便なまたは特別の救済手段がないこと(破産法16条)
D 同一請求につき勝訴の確定判決を得た者でないこと
E 訴権の濫用と評価されないこと
現在給付の訴え
訴えの利益が認められるのが通常
将来給付の訴え
基準時までに履行すべき状態にない給付請求権を主張するものゆえ、あらかじめ給付判決を得ておく必要のある場合であることが必要(135条)
[例] 定期行為、義務者が義務の存在を争っている場合、継続的給付の場合で現に履行期にある部分につき不履行がある場合
【論点】
継続的不法行為に基づいて将来発生する損害の賠償請求の訴えの利益

[結論] 
@ 請求権の基礎となる事実関係及び法律関係がすでに存在し、その継続が予測され
A 請求権の存否・内容につき債務者に有利となる事情の変動が、あらかじめ明確に予測できる事由に限られ
B それについての請求異議の訴え提起とその立証を債務者の負担としても酷とはいえない場合には、請求適格を認めるべき(判例)

[理由]
135条が「あらかじめ〜必要がある場合」に限ったのは、将来給付の訴えが認容されると、事情が変動したとき、債務者が請求異議の訴えを提起して、事情の変動につき証明責任を負うことになり酷だから

◎確認の訴え
原則→確認の利益が認められるには、以下の要件が必要

@ 確認対象として適切であること(対象選択の適否)(「自己の」&「現在の」&「権利・法律関係」についての「積極的な」確認請求であること)
A 即時に法律関係を確定する必要があること(即時確定の利益)
B 確認訴訟によることが適切であること(方法選択の適否)

[理由] 確認の訴えは対象が無限定である上、確認判決に執行力等がないため紛争解決手段として迂遠であり必ずしも紛争の抜本的解決となりにくい

例外→証書真否確認の訴え(134条)
[趣旨] 事実を確認しても、通常、権利関係たる本条の解決に役立たないが、書面によって直接に法律関係の存否を証明できるものであれば、紛争解決に役立つ

【論点】
過去の法律関係・法律行為の確認の訴えの利益

原則→認められない
[理由] 権利・法律関係は私的自治の原則に基づいて変化しうるので、過去の法律関係を確認しても紛争解決の抜本的解決にならない

例外→過去の権利・法律関係を確認することで、現在の紛争を抜本的に解決できる場合には、、確認の利益が認められる
【論点】
他人間の法律関係の確認の訴えの利益

○原則→認められない
[理由] 判決効は原則として当事者にしか及ばない(115条1項1号)

○例外→他人間の法律関係の確認によって、被告との関係で原告の法的地位の安定を結果する場合には、確認の利益が認められる
【論点】
遺産確認の訴えの利益

○結論→認められる(判例)
[理由] 確かに過去の法律関係の確認のように見えるし、共有持分確認ができる以上、確認の利益がないようにも思われる。しかし、遺産確認の訴えは当該財産が現に被相続人の遺産に属することの確認の訴えであるし、既判力によって後続の遺産分割審判の対象たる財産であることを不可争とするものであって、紛争の抜本的解決となるので確認の利益が認められる
【論点】
受遺者による、遺言者生存中の遺言無効確認の訴えの利益

○結論→認められない(判例)
[理由] 遺言は遺言者の死亡によりはじめてその効力が生じるのものであり、遺言者はいつでも遺言を取り消すことができるので、遺言者の生存中は、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではない。このことは、遺言者が心神喪失の状況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消
形成の訴え
形成要件を具備している場合は、形成の利益が認められるのが原則である。
もっとも、事情の変動により形成要件(必要性)がなくなる場合あり


第三節 当事者適格

当事者適格
当事者が当該請求について訴訟追行し、本案判決を求めることのできる資格
趣旨
誰を名宛人として判決を下せば紛争が解決するかを審査
○原則
→訴訟物の権利義務の主体(実質的当事者)
欠缺の効果
訴え却下(ただし、訴訟中に当事者適格を喪失した場合は訴訟承継の問題となる)
○例外
@ 第三者による訴訟担当(115条1項2号)
ex;法定訴訟担当、任意的訴訟担当

A 固有必要的共同訴訟の場合
→全員が共同して原告または被告とならなければならない

B 判決効が第三者に拡張される場合
→法定された者のみ当事者適格あり
【論点】
法人の内部紛争における被告適格

[結論] 法人自体を被告とすべき(判例)
[理由] これによりはじめて対世効が生じる。多くの利害関係人を正当に代表しうるのは法人自体
【論点】
現行法における住民団体・消費者団体等の訴訟の手法

@ 全員が当事者となり共同で共通の訴訟代理人を選任
A 29条の類推
B 選定当事者制度(30条)
【論点】
当事者適格を看過してなされた判決

[結論] 上訴で取り消しうる。ただし、再審事由とされていない。
◎第三者の訴訟担当
訴訟物たる権利義務の帰属主体に代わり、またはこれと並んで、第三者がその訴訟物につき当事者適格をもち、この者の受けた判決の効力が権利義務の主体に及ぶ場合


法定訴訟担当 管理処分権の付与に基づく
担当者のため
実質的利益帰属主体のため
職務上の当事者

任意的訴訟担当 明文のあるもの
明文のないもの

○法定訴訟担当
法律の規定により第三者が訴訟追行権をもつ場合

@ 自己の権利保全・実現のために法律上訴訟追行権が認められた場合
ex;債権者代位訴訟における債権者(民423条)
(この場合、債権者は自己の権利の保全の範囲で債務者の第三債務者に対する債権の管理処分権を取得し、その範囲で債務者は債権の処分権を失う。もっとも、債務者が債権者の債権の存在を争うときには、債権者および第三債務者に請求をたてて独立当事者参加すべし)

A 財産管理人
ex;破産管財人(破産法162条)

B 職務上の当事者
ex;人事訴訟における検察官(人事訴訟手続法2条、26条、32条2項4項)

○任意的訴訟担当
本来の権利義務者の授権のもとに行われる訴訟担当
ex;選定当事者(30条)、手形の取立委任の被裏書人(手形法18条)

【論点】
法定されている場合以外に、任意的訴訟担当は認められるか。

[結論] 弁護士代理の原則(54条1項)、訴訟信託の禁止(信託法11条)を潜脱するおそれがなく、かつこれを認める合理的理由があれば許される(判例)
[理由] この場合、三百代言によって素人が食い物にされることを防ぐという弁護士代理の原則・訴訟信託の禁止という制度趣旨に反しない


第四節 選定当事者

選定当事者
共同の利益を有する多数者の中から選定されて、その選定者のためにこれに代わって当事者となる者
(任意的訴訟担当のひとつ)

趣旨
多数の共同訴訟人の参加による訴訟手続の煩雑化・遅延を防止し、訴訟の簡略化・能率化を図る
選定の要件
@ 「共同の利益」を有し、共同訴訟人となるべき多数者の中から、訴訟係属前または継続後に選任されること(30条1項2項)

A 継続中の訴訟の原告あるいは被告と「共同の利益」を有する第三者は、自ら当事者とならずに原告または被告を選定当事者としうる(30条3項)。この場合、選定者にかかる請求の追加を要する(144条1項2項、300条3項)

【論点】
「共同の利益」とは

[結論]
@ 多数者間に共同訴訟人となるべき関係があり(38条)
A 主要な攻撃防御方法が共通する場合(判例)

[理由] 共同利益を広く解すると54条1項原則に反するし、逆に狭く解すると30条の趣旨が没却される

選定者の地位
いつでも選定の取消・変更ができる(30条4項)
訴訟係属後の選定により、選定者は当然に訴訟から脱退する(30条2項)
選定当事者の地位
選定当事者は、選定者全員および自分の利益について訴訟当事者として訴訟追行権を有し、訴訟についてのいっさいの行為ができる
選定の効果
選定当事者の受けた判決は、選定者の効力が及ぶ(115条1項2号)