第五編 訴訟の終了

訴訟終了の原因
当事者の意思による訴訟の終了
訴えの取り下げ
請求の放棄・認諾
訴訟上の和解
終局判決による訴訟の終了
その他
一身専属的訴訟物につき当事者が死亡した場合

第一章 当事者の意思による訴訟の終了

当事者の意思による訴訟の終了
民事訴訟の対象たる権利関係は裁判外では私的自治が妥当する。
そこで、裁判上でも当事者の意思を尊重し、訴訟の終了を当事者の意思に委ねることとした(処分権主義)
訴えの取り下げ
訴えによる審判申立を撤回する旨の裁判所に対する原告の意思表示(261条)
要件
@ 終局判決の確定に至るまで(261条1項)
A 被告が請求の当否につき準備書面を提出、弁論準備手続で申述または口頭弁論をした後は、被告の同意を要する(261条2項)
B 訴訟能力を有し、被補佐人・被補助人または後見人などの法定代理人、訴訟上の代理人については特別の授権を要する(32条2項1号、55条2項2号)
効果
@ 訴訟係属の遡及的消滅(262条1項)
A 終局判決言い渡しの後の訴えの取り下げの場合は、再訴の禁止(262条2項)
←終局判決を無駄なものとしたことに対する制裁(取下濫用制裁説)
【論点】
「同一の訴え」の意義

当事者・訴訟物の同一の他、訴えの利益または必要性についての事情が同一の場合に限る(判例)
←取り下げた者の裁判を受ける権利を不当に奪わないことも必要だから
【論点】
錯誤によって訴えの取り下げをした場合、取り下げの無効を主張できるか。訴えの取り下げに私法の意思表示の規定(民法95条、96条等)の類推適用はあるかが問題となる。

そもそも、訴訟は訴訟行為の積み重なりによって進行していくのであり、一つの訴訟行為の瑕疵が全体に波及してしまう。そこで、高度の手続の安定が要求される。
よって、訴訟行為には意思表示の規定の類推適用はない、とするのが原則である。

しかし、訴えの取り下げの場合は、手続を終了させる行為であり、後に訴訟行為の積み重なりが生じない。よって、これに意思表示の規定を類推適用しても手続の安定を害することはない。

そこで、この場合には例外として意思表示の規定の類推適用を肯定すべきである(肯定説)

(判例は否定説。もっとも否定説でも、詐欺・脅迫など刑事上罰すべき他人の行為に基づく場合は、338条1項5号を類推して、無効の主張を認める)
請求の放棄
請求に理由がないことを認める旨の期日における裁判所に対する原告の意思表示
請求の認諾
請求に理由があることを認める旨の期日における裁判所に対する被告の意思表示
要件
@ 請求が当事者の自由処分を許す性質のものであること
A 請求が法律上許される権利・法律関係の主張であること
B 訴訟能力を有し、訴訟上の代理人については特別の授権を要する(32条2項1号、55条2項2号)
C 訴訟要件の具備(判例)
←本案判決に代わる訴訟終了原因だから
効果
@ 放棄・認諾調書の成立によって訴訟は終了する
A 「確定判決と同一の効力」(267条)
【論点】
請求の放棄・認諾に意思表示の瑕疵があった場合、再訴は可能か。既判力は認められるかが問題となる。

この点、267条は請求の放棄・認諾に「確定判決と同一の効力」があると規定しているのだから、既判力もまた認められると解するのが筋である。

しかし、請求の放棄・認諾は当事者の意思を尊重した自主的紛争解決方法であり、公権的紛争解決方式である判決とは異なる。

にもかかわらず、一律に既判力まで認めて、瑕疵ある意思表示ををなした者への救済の途を拒んでは当事者に酷である。

そこで、判例は意思表示に瑕疵がない場合には既判力が認められるものの、瑕疵がある場合には既判力は認められないとして当事者の救済を図る。

しかし、既判力とは判決内容に関わりなく画一的に定まる性質のものである。意思表示の瑕疵の有無で既判力の有無を決めることは、既判力の本質に反する。

よって、端的に請求の放棄・認諾には既判力はない、と解するべきである。

この場合は、当事者は無効・取消を主張して、期日指定を求めうることになる。
裁判上の和解
起訴前和解(275条)および訴訟上の和解(89条、264条、265条、267条)のこと
即決和解
簡易裁判所において行われる、訴訟係属を前提としない和解(起訴前和解;275条)
訴訟上の和解
訴訟係属中に当事者双方が訴訟物についての主張を譲り合って訴訟を終了させる旨の期日における合意
要件
@ 訴訟物について当事者双方の互譲があること
A 請求が当事者の自由処分を許す性質のものであること
B 請求が法律上許される権利・法律関係の主張であること
C 訴訟能力を有し、訴訟上の代理人については特別の授権を要する(32条2項1号、55条2項2号)
効果
@ 和解の成立した範囲での訴訟の終了
A 調書への記載により「確定判決と同一の効力」が生じる(267条)
【論点】
訴訟上の和解の法的性質

民法上の和解と訴訟行為との双方の性質をもつ(判例)
瑕疵ある和解の効果の論点と関連。しかしいまはその重要性は失せた
【論点】
訴訟上の和解に意思表示の瑕疵があった場合、無効の主張はできるか。既判力の有無が問題となる。

この点、267条は訴訟上の和解に「確定判決と同一の効力」があると規定しているのだから、既判力もまた認められると解するのが筋である。

しかし、訴訟上の和解は当事者の意思を尊重した自主的紛争解決方法であり、公権的紛争解決方式である判決とは異なる。

にもかかわらず、一律に既判力まで認めて、瑕疵ある意思表示ををなした者への救済の途を拒んでは当事者に酷である。

また、和解には判決主文に対応する部分がないから、既判力を認めるとその客観的範囲が不明確になり、手続が不安定になる。

そこで、判例は意思表示に瑕疵がない場合には既判力が認められるものの、瑕疵がある場合には既判力は認められないとして当事者の救済を図る(制限的既判力説)。

しかし、既判力とは判決内容に関わりなく画一的に定まる性質のものである。意思表示の瑕疵の有無で既判力の有無を決めることは、既判力の本質に反する。

よって、端的に訴訟上の和解には既判力はない、と解するべきである。
【論点】
訴訟上の和解に瑕疵があり、その無効を認めたとして、いかなる争い方をすべきか。

この場合、新たに訴え(和解無効確認の訴え・請求異議の訴え)を起こして、訴訟を再開する方法が筋である。

しかし、それでは旧訴の訴訟状態・訴訟資料の流用ができず、手続の負担が大きい。

そこで、訴訟経済・当事者の公平の観点から、期日指定の申立を行い口頭弁論期日を再開する方法を認めるべきである(判例)

*進級の利益の問題もある・・・・あとで書き直す
【論点】
訴訟上の和解の内容となっている私法上の契約が解除された場合の争い方

確かに、解除により和解は遡及的に消滅するのであるから、旧訴が復活するようにも思える。

しかし、解除は、和解成立後に生じる原因に基づく権利変動であって、旧訴とは別個の紛争である。また、旧訴訟の訴訟状態・訴訟資料を利用する利点もない

よって、旧訴は復活せず(期日指定の方法によることはできず)、新訴の提起により争うべきである


第二章 終局判決による訴訟の終了

裁判
裁判機関がその判断または意思を法定の形式で表示する訴訟行為
裁判の種類

主体
対象
手続
告知方法
不服申立方法
判決 裁判所
重要事項
必要的口頭弁論
言い渡し
控訴・上告
決定
裁判所
付随的事項
任意的口頭弁論
相当方法告知
抗告・再抗告
命令
裁判官
付随的事項
任意的口頭弁論
相当方法告知
抗告・再抗告
判決
裁判所が、重要事項(訴え、上訴などに対する終局的判断)につき、原則として必要的口頭弁論に基づきなす裁判。言い渡しを要する
決定
裁判所が、簡易迅速を要する事項につきなす裁判。任意的口頭弁論であり、言い渡しも不要

[例] 管轄指定の決定、移送決定、除斥・忌避決定、補正命令、参加許否決定、引受承継決定、訴訟救助決定、釈明処分、弁論の制限・分離・併合の決定、時機に後れた攻撃防御方法の却下決定、続行命令、証拠決定、文書提出命令、証拠保全の決定等々・・・・・・
命令
裁判官が、簡易迅速を要する事項につきなす裁判

[例] 釈明権、訴訟指揮に関する命令、訴状補正命令・却下命令、期日指定命令等々・・・
判決の種類
終局判決
全部判決
一部判決
中間判決
○終局判決
訴えまたは上訴により、係属している事件の全部または一部につき、当該審級の審理を完結させる判決
○中間判決
審理を整理し終局判決を準備する目的で、審理中に問題となった当事者間の争いを終局判決に先立って解決しておく判決(245条)
要件
@ 独立した攻撃防御方法
A 中間の争い
B 請求の原因および数額が争われている場合のその原因
効果
@ 中間判決をした裁判所は、中間判決の主文で示した判断に拘束され、その判断を前提として終局判決をしなければならない
A 当事者は、中間判決の直前の口頭弁論終結時までに提出しえた攻撃防御方法を以後提出しえなくなる
方法
終局判決を待って上訴して争う(283条)
○全部判決
同一訴訟手続で審理されている事件の全部を同時に完結させる終局判決
○一部判決
同一訴訟手続で審理されている事件の一部を、他の部分と切り離してまず完結する終局判決(243条2項3項)
趣旨
審理の整理、一部についてでも当事者に早期の権利の満足を与える
要件
@ 「訴訟の一部」が裁判をなすに熟したとき
A 「弁論の併合を命じた数個の訴訟中の一つ」が裁判をなすに熟したとき
B 被告が反訴を提起した場合の「本訴または反訴」が裁判をなすに熟したとき
【論点】
一部判決の可否

243条2項は「一部について終局判決をすることができる」としているので、一部判決をするか否かは原則として裁判所の裁量にゆだねられていると考えられる。

しかし、いかに裁量行為とはいっても、一部判決と残部判決の内容が矛盾・抵触するおそれがある場合には許されるべきではない。

よって、次のように解するべきである
イ) 同一請求の一部に対する場合
← 一個の請求が可分で、その一部に法律上の識別・特定基準があれば、一部判決は可能

ロ) 請求の客観的併合の場合(単純・予備的)
← 単純併合は原則可能。しかし、先決関係・基礎の法律関係が共通の場合は不可

ハ) 共通訴訟の場合
← 合一確定の要請のある場合は不可
○追加判決
請求の一部について裁判を脱漏した場合に、脱漏した部分は原審に係属し、裁判所が申し立てまたは職権によりその部分の判決をする場合(258条)
○訴訟判決
訴訟要件または上訴の要件の欠缺を理由として訴えまたは上訴を不適法として却下する終局判決
○本案判決
訴えによる請求の理由または上訴による不服申立の理由があるか否かを裁判する終局判決
記載事項
(253条1項)
@ 本文
A 事実
B 理由
C 口頭弁論終結の日
D 当事者及び法定代理人
E 裁判所
調書判決
判決書に基づかないで判決を言い渡し、調書に記載させる制度(254条)
←実質的に争いのない事件につき、判決およびその言い渡しを簡略化するのが合理的だから