訴訟終了の原因 |
当事者の意思による訴訟の終了 |
訴えの取り下げ |
請求の放棄・認諾 |
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訴訟上の和解 |
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終局判決による訴訟の終了 |
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その他 |
一身専属的訴訟物につき当事者が死亡した場合 |
当事者の意思による訴訟の終了 |
民事訴訟の対象たる権利関係は裁判外では私的自治が妥当する。 そこで、裁判上でも当事者の意思を尊重し、訴訟の終了を当事者の意思に委ねることとした(処分権主義) |
訴えの取り下げ |
訴えによる審判申立を撤回する旨の裁判所に対する原告の意思表示(261条) |
要件 |
@ 終局判決の確定に至るまで(261条1項) A 被告が請求の当否につき準備書面を提出、弁論準備手続で申述または口頭弁論をした後は、被告の同意を要する(261条2項) B 訴訟能力を有し、被補佐人・被補助人または後見人などの法定代理人、訴訟上の代理人については特別の授権を要する(32条2項1号、55条2項2号) |
効果 |
@ 訴訟係属の遡及的消滅(262条1項) A 終局判決言い渡しの後の訴えの取り下げの場合は、再訴の禁止(262条2項) ←終局判決を無駄なものとしたことに対する制裁(取下濫用制裁説) |
【論点】 |
「同一の訴え」の意義 当事者・訴訟物の同一の他、訴えの利益または必要性についての事情が同一の場合に限る(判例) ←取り下げた者の裁判を受ける権利を不当に奪わないことも必要だから |
【論点】 |
錯誤によって訴えの取り下げをした場合、取り下げの無効を主張できるか。訴えの取り下げに私法の意思表示の規定(民法95条、96条等)の類推適用はあるかが問題となる。 そもそも、訴訟は訴訟行為の積み重なりによって進行していくのであり、一つの訴訟行為の瑕疵が全体に波及してしまう。そこで、高度の手続の安定が要求される。 よって、訴訟行為には意思表示の規定の類推適用はない、とするのが原則である。 しかし、訴えの取り下げの場合は、手続を終了させる行為であり、後に訴訟行為の積み重なりが生じない。よって、これに意思表示の規定を類推適用しても手続の安定を害することはない。 そこで、この場合には例外として意思表示の規定の類推適用を肯定すべきである(肯定説) (判例は否定説。もっとも否定説でも、詐欺・脅迫など刑事上罰すべき他人の行為に基づく場合は、338条1項5号を類推して、無効の主張を認める) |
請求の放棄 |
請求に理由がないことを認める旨の期日における裁判所に対する原告の意思表示 |
請求の認諾 |
請求に理由があることを認める旨の期日における裁判所に対する被告の意思表示 |
要件 |
@ 請求が当事者の自由処分を許す性質のものであること A 請求が法律上許される権利・法律関係の主張であること B 訴訟能力を有し、訴訟上の代理人については特別の授権を要する(32条2項1号、55条2項2号) C 訴訟要件の具備(判例) ←本案判決に代わる訴訟終了原因だから |
効果 |
@ 放棄・認諾調書の成立によって訴訟は終了する A 「確定判決と同一の効力」(267条) |
【論点】 |
請求の放棄・認諾に意思表示の瑕疵があった場合、再訴は可能か。既判力は認められるかが問題となる。 この点、267条は請求の放棄・認諾に「確定判決と同一の効力」があると規定しているのだから、既判力もまた認められると解するのが筋である。 しかし、請求の放棄・認諾は当事者の意思を尊重した自主的紛争解決方法であり、公権的紛争解決方式である判決とは異なる。 にもかかわらず、一律に既判力まで認めて、瑕疵ある意思表示ををなした者への救済の途を拒んでは当事者に酷である。 そこで、判例は意思表示に瑕疵がない場合には既判力が認められるものの、瑕疵がある場合には既判力は認められないとして当事者の救済を図る。 しかし、既判力とは判決内容に関わりなく画一的に定まる性質のものである。意思表示の瑕疵の有無で既判力の有無を決めることは、既判力の本質に反する。 よって、端的に請求の放棄・認諾には既判力はない、と解するべきである。 この場合は、当事者は無効・取消を主張して、期日指定を求めうることになる。 |
裁判上の和解 |
起訴前和解(275条)および訴訟上の和解(89条、264条、265条、267条)のこと |
即決和解 |
簡易裁判所において行われる、訴訟係属を前提としない和解(起訴前和解;275条) |
訴訟上の和解 |
訴訟係属中に当事者双方が訴訟物についての主張を譲り合って訴訟を終了させる旨の期日における合意 |
要件 |
@ 訴訟物について当事者双方の互譲があること A 請求が当事者の自由処分を許す性質のものであること B 請求が法律上許される権利・法律関係の主張であること C 訴訟能力を有し、訴訟上の代理人については特別の授権を要する(32条2項1号、55条2項2号) |
効果 |
@ 和解の成立した範囲での訴訟の終了 A 調書への記載により「確定判決と同一の効力」が生じる(267条) |
【論点】 |
訴訟上の和解の法的性質 民法上の和解と訴訟行為との双方の性質をもつ(判例) 瑕疵ある和解の効果の論点と関連。しかしいまはその重要性は失せた |
【論点】 |
訴訟上の和解に意思表示の瑕疵があった場合、無効の主張はできるか。既判力の有無が問題となる。 この点、267条は訴訟上の和解に「確定判決と同一の効力」があると規定しているのだから、既判力もまた認められると解するのが筋である。 しかし、訴訟上の和解は当事者の意思を尊重した自主的紛争解決方法であり、公権的紛争解決方式である判決とは異なる。 にもかかわらず、一律に既判力まで認めて、瑕疵ある意思表示ををなした者への救済の途を拒んでは当事者に酷である。 また、和解には判決主文に対応する部分がないから、既判力を認めるとその客観的範囲が不明確になり、手続が不安定になる。 そこで、判例は意思表示に瑕疵がない場合には既判力が認められるものの、瑕疵がある場合には既判力は認められないとして当事者の救済を図る(制限的既判力説)。 しかし、既判力とは判決内容に関わりなく画一的に定まる性質のものである。意思表示の瑕疵の有無で既判力の有無を決めることは、既判力の本質に反する。 よって、端的に訴訟上の和解には既判力はない、と解するべきである。 |
【論点】 |
訴訟上の和解に瑕疵があり、その無効を認めたとして、いかなる争い方をすべきか。 この場合、新たに訴え(和解無効確認の訴え・請求異議の訴え)を起こして、訴訟を再開する方法が筋である。 しかし、それでは旧訴の訴訟状態・訴訟資料の流用ができず、手続の負担が大きい。 そこで、訴訟経済・当事者の公平の観点から、期日指定の申立を行い口頭弁論期日を再開する方法を認めるべきである(判例) *審級の利益の問題もある・・・・あとで書き直す |
【論点】 |
訴訟上の和解の内容となっている私法上の契約が解除された場合の争い方 確かに、解除により和解は遡及的に消滅するのであるから、旧訴が復活するようにも思える。 しかし、解除は、和解成立後に生じる原因に基づく権利変動であって、旧訴とは別個の紛争である。また、旧訴訟の訴訟状態・訴訟資料を利用する利点もない よって、旧訴は復活せず(期日指定の方法によることはできず)、新訴の提起により争うべきである |
裁判 |
裁判機関がその判断または意思を法定の形式で表示する訴訟行為 |
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裁判の種類 |
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判決 |
裁判所が、重要事項(訴え、上訴などに対する終局的判断)につき、原則として必要的口頭弁論に基づきなす裁判。言い渡しを要する |
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決定 |
裁判所が、簡易迅速を要する事項につきなす裁判。任意的口頭弁論であり、言い渡しも不要 [例] 管轄指定の決定、移送決定、除斥・忌避決定、補正命令、参加許否決定、引受承継決定、訴訟救助決定、釈明処分、弁論の制限・分離・併合の決定、時機に後れた攻撃防御方法の却下決定、続行命令、証拠決定、文書提出命令、証拠保全の決定等々・・・・・・ |
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命令 |
裁判官が、簡易迅速を要する事項につきなす裁判 [例] 釈明権、訴訟指揮に関する命令、訴状補正命令・却下命令、期日指定命令等々・・・ |
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判決の種類 |
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○終局判決 |
訴えまたは上訴により、係属している事件の全部または一部につき、当該審級の審理を完結させる判決 |
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○中間判決 |
審理を整理し終局判決を準備する目的で、審理中に問題となった当事者間の争いを終局判決に先立って解決しておく判決(245条) |
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要件 |
@ 独立した攻撃防御方法 A 中間の争い B 請求の原因および数額が争われている場合のその原因 |
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効果 |
@ 中間判決をした裁判所は、中間判決の主文で示した判断に拘束され、その判断を前提として終局判決をしなければならない A 当事者は、中間判決の直前の口頭弁論終結時までに提出しえた攻撃防御方法を以後提出しえなくなる |
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方法 |
終局判決を待って上訴して争う(283条) |
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○全部判決 |
同一訴訟手続で審理されている事件の全部を同時に完結させる終局判決 |
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○一部判決 |
同一訴訟手続で審理されている事件の一部を、他の部分と切り離してまず完結する終局判決(243条2項3項) |
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趣旨 |
審理の整理、一部についてでも当事者に早期の権利の満足を与える |
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要件 |
@ 「訴訟の一部」が裁判をなすに熟したとき A 「弁論の併合を命じた数個の訴訟中の一つ」が裁判をなすに熟したとき B 被告が反訴を提起した場合の「本訴または反訴」が裁判をなすに熟したとき |
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【論点】 |
一部判決の可否 243条2項は「一部について終局判決をすることができる」としているので、一部判決をするか否かは原則として裁判所の裁量にゆだねられていると考えられる。 しかし、いかに裁量行為とはいっても、一部判決と残部判決の内容が矛盾・抵触するおそれがある場合には許されるべきではない。 よって、次のように解するべきである イ) 同一請求の一部に対する場合 ← 一個の請求が可分で、その一部に法律上の識別・特定基準があれば、一部判決は可能 ロ) 請求の客観的併合の場合(単純・予備的) ← 単純併合は原則可能。しかし、先決関係・基礎の法律関係が共通の場合は不可 ハ) 共通訴訟の場合 ← 合一確定の要請のある場合は不可 |
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○追加判決 |
請求の一部について裁判を脱漏した場合に、脱漏した部分は原審に係属し、裁判所が申し立てまたは職権によりその部分の判決をする場合(258条) |
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○訴訟判決 |
訴訟要件または上訴の要件の欠缺を理由として訴えまたは上訴を不適法として却下する終局判決 |
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○本案判決 |
訴えによる請求の理由または上訴による不服申立の理由があるか否かを裁判する終局判決 |
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記載事項 (253条1項) |
@ 本文 A 事実 B 理由 C 口頭弁論終結の日 D 当事者及び法定代理人 E 裁判所 |
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調書判決 |
判決書に基づかないで判決を言い渡し、調書に記載させる制度(254条) ←実質的に争いのない事件につき、判決およびその言い渡しを簡略化するのが合理的だから |
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自縛力 (自己拘束力) |
言い渡しによって判決が成立すると、確定をまたず、判決した裁判所は判決の撤回や変更をすることができなくなるという拘束力 |
判決の更正 |
判決の表現上の誤りを訂正・補充すること(257条) |
要件 |
判決に、計算違い、誤記、その他これに類する明白な表現上の誤りがあること |
判決の変更 |
判決裁判所が法令に違反したことを発見して、判決の判断内容を変更すること(256条) |
要件 |
@ 判決に法令の違反があることを発見したこと A 言い渡し後一週間以内であること B 判決が確定前であること C 変更をするために口頭弁論を開く必要がないこと |
定期金賠償判決 |
定期金賠償に限ってであるが、事情変更に基づく確定判決の変更の訴えが新設された(117条) |
羈束力 |
裁判一般における判断内容が当該事件の手続内において他の裁判所を拘束すること [例] 事実審で適法に確定された事実認定は上告審を拘束、移送の裁判は移送を受けた他の裁判所を拘束 |
判決の確定 |
当事者が通常の不服申立手段によって争えない状態になり、判決が当該手続内で取り消されることがなくなる状態(この状態を確定判決の当事者に対する効力ととらえて、形式的確定力という) |
判決の不存在 |
判決として成立するための基本的要件に欠け、法律上判決としての意義を認められないもの。この場合は、何らの訴訟法上の効力をもたず、上訴の対象にもならない [例] 裁判官でない者が言い渡した判決、未だ言い渡されていない判決など |
瑕疵ある判決 |
手続上に瑕疵のある判決、内容が不当な判決。判決の変更、上訴・再審により取り消しうる |
判決の無効 |
手続上に瑕疵ある判決、内容が不当な判決につき既判力、執行力、形成力などの効力が認められない場合。 ←判決が存在する以上、利用されるおそれがあるので、後訴での無効主張、上訴・再審による取消を認めるべきである [例] 実在しない当事者に対してなされた判決、治外法権者に対してなされた判決、内容が公序良俗違反の判決、物権法定主義に反する判決等々・・・・・ |
【論点】 |
当事者が相手方または裁判所を故意に欺いて確定判決を取得した場合の問題点 被告が居所不明であると偽って訴状の公示送達を申し立て、被告の手続関与の機会を奪って勝訴判決を取得した場合、いかなる手段で救済しうるか @ 338条を類推適用できないか A 相手方は判決の当然無効を主張しうるか B 無効主張できるとして、民法709条によりいきなり損害賠償をしうるか |
既判力 |
確定判決の判決主文中の判断が、控訴において当事者及び裁判所を拘束する効力(実質的確定力) |
根拠 |
紛争の蒸し返しを防止するために必要であり、当事者に手続保障が与えられたことにより正当化される(手続保障説) 既判力の目的・根拠については、争いがあるが、既判力の目的は、紛争解決基準の安定にあると解し、その根拠は、当事者に対する手続保障にあると解する説(二元説)が妥当である。 既判力の目的たる紛争解決の基準とは、ある権利関係の争いについての裁判所の判断が判決の形で確定した以上は、他の裁判所はこれを紛争解決の基準として尊重し、これと矛盾抵触する判断は、避けるべきである、という意味である。 他方、既判力は、他の事件に対する当事者の他の資料の提出の機会を制限するという形で現れる。とすれば、これを正当化する根拠が必要である。それが手続保障の考えである。 すなわち、当事者は、すでに前訴において特定の権利関係に関して裁判資料提出の機会を与えられ、その結果として一定の判断が確定した以上、後訴においてもその判断の拘束力によって裁判資料提出の機会が制限されてもやむを得ないという意味である。 |
問題点 |
@ いかなる場合に(作用局面) A いつの時点の(作用場面) B いかなる判断について(客観的範囲) C 誰と誰の間で(主観的範囲) ・・・・・拘束力が生じるか、が問題となる |
◎作用局面 |
前訴の確定判決で判断された法律関係が後訴で再び判断の対象となる場合に作用する (イ) 前訴と後訴の訴訟物が同一の場合 (ロ) 前訴の訴訟物が後訴の先決問題である場合 (ハ) 後訴請求が前訴判決と実体法上矛盾関係にたつ場合 |
◎作用態様 |
@ 消極的作用 当事者は既判力の生じた判断を争うことは許されず、後訴裁判所はこれを争う申立・主張・抗弁を不適法却下しなければならない A 積極的作用 後訴裁判所は既判力で確定された判断に拘束され、これを前提として後訴の審判をしなければならない |
◎時的限界 |
民事訴訟の対象たる権利関係は時の経過とともに変動するから、その判断がいつの時点のものかを明確にする必要あり |
基準時 |
事実審の口頭弁論終結時 ←終局判決は事実審口頭弁論終結時までに提出された資料を基礎とし、それまでは当事者に弁論等の手続保障があるから、それ以前の事由の主張を封じられても当事者に酷ではない |
効果 |
既判力は基準時前の事由に基づく基準時における権利関係の存否の判断について生じる →したがって、判決確定後、当事者は基準時における権利関係を基準時前の事由に基づいて争うことはできない(遮断効) |
内容 |
@ 基準時以後の事由に基づいて基準時以後の権利関係を争える A 基準時以前の事由に基づいて基準時以前の権利関係を争える |
【論点】 |
前訴の基準時前に成立していた取消権、解除権、相殺権などを基準時後にはじめて行使して、後訴で前訴判決の内容を争えるか (イ) 取消権、解除権の場合 『結論』 争えない [理由] @ 形成権が基準時前に生じていた以上、その主張は基準時前に可能だったはず A 訴訟物自体の瑕疵に関わる紛争であり、再訴を許すべきではない (ロ) 相殺権の場合 『結論』 争える [理由] @ 反対債権の存否は訴訟物たる訴求債権についての紛争とは本来別個の紛争である A 相殺権の主張は実質敗訴といえるから、前訴にその提出を要求するのは酷 (ハ) 建物買取請求権の場合 『結論』 争える [理由] @ これは相手方の主張を認めることを前提とする予備的抗弁であり、実質敗訴といえるから、前訴にその提出を要求するのは酷である A 取消権等と異なり、原告の請求権自体に付着する瑕疵に関する抗弁ではない B かく解するのが、建物収去による社会経済上の不利益防止の趣旨に合致 |
◎客観的範囲 |
『原則』 既判力は判決主文に示された訴訟物たる権利・法律関係についての判断につき生じる(114条1項) ←逆に言うと、判決理由中の判断には生じない 「趣旨」 @ 訴訟物に既判力を認めれば、紛争解決するに必要十分 A 私有中の判断に既判力を認めると、当事者に不意打ちとなる 『例外』 相殺の抗弁が判決理由中で判断された場合、相殺をもって対抗した額に限り反対債権の存否につき既判力が生じる(114条2項) ←明文が認める例外である 「趣旨」 反対債権の存否につき既判力を認めないと、被告が再び反対債権を行使して紛争が蒸し返されるおそれがある。 |
【論点】 |
反対債権の不存在を理由に相殺の抗弁を排斥した場合、いかなる点につき既判力が生じるか? 反対債権の不存在につき既判力が生じる |
【論点】 |
相殺の抗弁が認められ、その限度で原告の請求を棄却した場合、いかなる点につき既判力が生じるか? 『結論』 訴求債権と反対債権がともに存在し、かつ相殺によって消滅したことにつき、生じる [理由] 反対債権の不存在につき既判力が生じるとの見解もある。 しかし、それでは、@原告は反対債権がはじめから存在しなかったとして、民法703条、709条の請求をする余地があり、また、A被告は原告の債権は別の理由で不存在であったとして、民法703条、709条の請求する余地があり妥当でない |
【論点】 |
争点効(前訴で当事者が主要な争点として争い、かつ裁判所がこれを審理して下した争点についての判断に生じる通用力)は認められるか? この点、当事者間の真偽・公平に合致するとし、あるいは紛争の一回的解決に資するとして、これを肯定する説もある。 しかし、かように明文のない概念では、基準・範囲が明確ではないので、判決効が不当に拡張される可能性がある。 確かに、これを認めないと当事者間の信義・公平に反する事態が生じ得るが、それは、信義則(2条)によって個別に既判力と同様の効力を認めれば足りると解するべきである。 よって、認めるべきではない(判例) |
◎主観的範囲 |
『原則』 既判力は対立する訴訟当事者間に生じる(115条1項1号) {趣旨」 判決は当事者間の紛争を解決するためのものであり、また、処分権主義・弁論主義の下で判決に至る手続保障を与えられていたのは両当事者のみだから 『例外』 イ) 当事者間の紛争解決の実効性を確保する必要があり、かつ手続保障がなされていた場合 ロ) すべての関係人間を画一的に処理する場合 には、当事者以外の第三者にも既判力が及ぶ (具体例) @ 口頭弁論終結後の承継人(115条1項3号) A 請求の目的物の所持者(115条1項4号) B 訴訟担当の場合の利益帰属主体(115条1項2号) C 訴訟脱退者(48条) ←独立当事者参加・参加承継・引受承継の場合 D その他 →会社関係訴訟・人事訴訟・破産債権確定訴訟 E 反射効(?) |
○口頭弁論終結後の承継人 |
敗訴当事者が訴訟物を第三者に処分することで、訴訟の結果を無駄にすることを防止し、紛争解決の実効性(法的安定性)を図る必要があるし、この場合、もっとも充実した訴訟追行を期待できる前主により手続保障も代替されていたといえる |
【論点】 |
承継人の範囲 (a) 適格承継説=当事者適格の移転を基準とする ←当事者適格を有する者には判決効を及ぼし紛争解決を図る必要性があり、当時射的か卯を伝来的に取得した場合であれば手続保障も代替されているといえる (b)依存関係説=第三者の実体法上の法的地位と当事者の実体法上の法的地位との依存関係を基準にする ←紛争解決の必要性と手続保障が代替されていたかは、実体法上の法的地位を考慮しないと判断できない |
【論点】 |
訴訟物と承継人の関係 『結論』 承継人に既判力を及ぼすためには訴訟物が物権的請求権であることが必要である 「理由」 実体法との調和の見地(物権には対世効がある←旧訴が前提) |
【論点】 |
第三者が固有の抗弁を有する場合、この第三者は承継人にあたるか (a) 形式説=固有の抗弁を有する者であっても承継人にあたる 「理由」 @ 既判力は画一的な制度的拘束力であり実体関係に左右されるべきではない A 第三者は固有の抗弁を後訴でなお提出できる ←固有の抗弁は既判力の時的限界の問題でカバー (b) 実質説(判例)=固有の抗弁を有する者は承継人にあたらない 「理由」 自己固有の抗弁を持つ者は、前者と依存関係にない。よって手続保障が前主によって代替されていない |
○請求の目的物の所持者 |
この者に判決効を及ぼさなければ紛争の解決ができず、また判決効を及ぼしても、所持者の固有の実体的利益を害するおそれはない ←請求の目的物の所持者は目的物につき独自の法的利益をもたず、その法的地位は当事者に完全に依存するから手続保障を要しない |
○訴訟担当の利益帰属主体 |
訴訟担当者に判決効を及ぼさなければ紛争の解決ができず、また訴訟担当者の訴訟追行により、代替的にではあるが、利益帰属主体の手続保障が認められることから |
【論点】 |
債権者代位訴訟において債権者に対する判決の既判力が債務者に及ぶか 『結論』 債権者の勝敗に関わらず、115条1項2号により刷毛つこうが債務者に及ぶ 「理由」 @ 債務者は債権者の受けた敗訴判決には拘束されないとすると、債権者と債務者の紛争に巻き込まれた第三者は勝訴判決を得ても、再度債務者から訴えられるという不利益を被ることになるし、訴訟経済にも反する A 債務者の手続保障は、訴訟告知(非訟事件手続方76条1項)により独立当事者参加や共同訴訟的補助参加の途を開いておけば足りる |
○反射効 |
当事者間に既判力を生じたことが、当事者の一方と実体法上の依存関係にある第三者に反射的に有利・不利に影響を及ぼす効力 「例」→主債務者と保証人との間、合名会社と無限責任社員との間等々 |
【論点】 |
反射効は認められるか 『結論』 否定するのが判例である 「理由」 @ 明文の規定がない A 肯定説は、既判力の存在により当事者間に判決内容通りの処分行為があったものとみなしているが、既判力の性質を訴訟法上の効力と考える以上、そのような考え方は採れない B 反射効には紛争の蒸し返し防止というメリットがあるが、それは既判力の拡張という更正によっても達成可能 |
他の判決の効力 |
○執行力 確定判決の主文に掲げられた給付義務を民事執行手続きによって実現できる根拠となる効力 ○形成力 形成請求を認容する形成判決が確定することによって、判決内容通りに法律関係の発生・変更・消滅を生じさせる効力 |