第六編 複雑訴訟

第二章 多数当事者訴訟

第一節 共同訴訟

共同訴訟
一つの訴訟手続に数人の原告または関与している訴訟形態
趣旨
審理の重複を回避、紛争の一回的解決、訴訟経済
通常共同訴訟
各共同訴訟人と相手方との間で合一確定の必要がない共同訴訟
要件
@ 主観的併合要件(38条)
イ) 訴訟物たる権利義務が共通の場合
ロ) 訴訟物たる権利義務が同一の事実上および法律上の原因に基づく場合
ハ) 訴訟物たる権利義務が同種であって、事実上および法律上同種の原因に基づく場合
A 客観的併合要件を具備していること(136条)
B 各請求が一般の訴訟要件を具備していること

審判方法
共同訴訟人独立の原則(39条)
←他の共同訴訟人に制約されることなく、各自独立に訴訟を追行することができるという原則
[趣旨] 通常共同訴訟は同一確定の必要がない場合であり、もともと別々に解決されてもよい性質の事件が併合されているにすぎないから
[既決] 各自独立して、請求の放棄・認諾、和解、取り下げ、上訴、自白することができる
【論点】
共同訴訟人間に証拠共通の原則(共同訴訟人の一人が提出した証拠は他の共同訴訟人の援用がなくとも、その者の事実の認定のための共通の資料としうる)が妥当するか

『結論』 肯定
「理由」
@ 共同訴訟人独立の原則を貫くと、紛争の一回的・統一的解決の要請や各訴訟人間の公平に反する結果となる
A 自由心証主義(247条)の下では、一つの歴史的事実の心証は一つしかない
【論点】
共同訴訟人間に主張共通の原則(一つの共同訴訟人がある主張をし、他の共同訴訟人がこれと抵触する行為を積極的にしていない場合には、その主張が他の共同訴訟人に利益なものである限り、その者にもその効果が及ぶとする原則)が妥当するか

『結論』 否定
「理由」 証拠共通は、当事者の主張を前提とする裁判官の心証形成の問題だが、主張共通の場合は、弁論主義の趣旨(第一テーゼ)を逸脱するから
必要的共同訴訟
判決の合一確定が要求される共同訴訟
固有必要的共同訴訟
数人が共同してはじめて当事者適格が認められ、個別に訴えまたは訴えられたのでは本案判決をなしえないという共同訴訟形態
【論点】
通常共同訴訟と固有必要的共同訴訟の区別の基準

『原則』 実体法上の管理処分権の帰属態様を基準とすべき
「理由」 訴訟は実体法上の権利の処分と同視できる

『修正』 ただ、@紛争解決の実効性(再度の訴訟のおそれの有無)、A関係当事者の利益(除外しても良いか)、B手続の進行状況など訴訟法的観点も加味して判断すべき
「理由」 一部の者が提訴を拒んだ場合や、共同訴訟人となる者の把握が困難な場合などに紛争解決の途を閉ざすのは不当
類型
@ 他人間の権利関係の変動を生じさせる形成の訴え
[例] 民法395条
「理由」 判決が区々となるのでは紛争解決の実効性が確保できず、また形成判決による権利関係の変動を受ける者全員の手続保障が必要だから

A 数人が共同してのみ管理・処分できる財産に関する訴訟
[例] 30条、破産法163条
「理由」 実体法上、単独で管理処分権を行使し得ない者は、単独の訴訟追行も不可