報道特別番組”独占スクープ”キム・ヘギョンインタビュー
(フジテレビ10月25日)
この独占インタビュー(テレビ局ではフジテレビ、新聞社では 「朝日」と「毎日」)は金曜日の午後9時からレギュラー番組の2時間枠を差し替えてのオンエアーとなった。 その日の午後4時にインタビューしたものを6時には車の中で横田夫妻に見せ、その場面も収めての9時の生放送で ある。しかもそのビデオを途中まで見て「かわいそう・・」とつぶやいていためぐみさんのお母さん(早紀江)は、 あまりの質問の厳しさに居たたまれなくなり、その場を離れている。(翌日の会見で「惨(むご)い」という 言葉を使っていた)そしてその生番組には出演せずかろうじてお父さん(滋)だけが出演した。
そんな中でも独占スクープという言葉が頭に付いた特別報道番組、さぞかしフジの報道局の気持ちははやっただろう。 しかしその報道の意図するところは、他局に先駆けてという取材合戦の延長上にあり視聴率第一主義が前面に出ていて 、見ているうちに段々と視聴者の心を冷めさせるものだった。特にキム・ヘギョンちゃんが「おじいさん、おばあさんには会いたい、 でも私は日本に行けない、どうぞこちらに来てほしい」という言葉を涙ながらに訴える場面、最初に彼女の涙を流す 姿を見たときは、胸が締め付けられるようだったのに、何度も繰り返しそこが流されると二つの意図的なものが 見え隠れしてすーっと気持ちが冷めていくのを感じた。それはフジ側の「お涙ちょうだい」ムード作りと北朝鮮政府の少女利用の 構図である。
フジ側は十分にこの番組の主旨を検討しないで 流したのではないだろうか。繰り返しキム・ヘギョンちゃんが「おじいさん、おばあさんにこちらに来てほしい」と 北朝鮮政府の伝言とも言うべき言葉を涙ながらに訴える場面を流しながら、番組の最後には取って付けたように 「私たちはこのインタビューをすることによって横田めぐみさんの消息の手がかりが少しでもわかればと思い・・・」 などという意味のことを安藤優子に言わせている。またゲストには拉致議連の平沢勝栄と「拉致被害者を救う 会」の西岡力を呼んでいて批判的な意見も述べさせてはいた。フジ側としてはとにかく孫のビデオに泣く おじいちゃん、おばあちゃんの顔が一番ほしかったのだろうが、その意図とは全く逆の「このインタビューに怒りを感じる」 という西岡や、あくまでも「北朝鮮に言わされてる」という見方をくずさない平沢がいてはそういう雰囲気でも なくなり、見ていてちぐはぐな一貫性のないものになった。初めは「涙の対面」を望んだのにこのインタビューを 非難するような二人の発言で雲行きは怪しくなり、フジ側は番組中に「決して北朝鮮側が仕組んだものではない」という コメントを読み上げねばならなくなり、また終わりにはとってつけたような「めぐみさんの消息発言」で締めたのである。
なおこの番組後、局には抗議の電話が殺到したそうだ。(2チャンネルもフジへの非難や番組コーディネーター? フジ側インタビュアーの経歴暴露などで賑わっていた)ひとつは北朝鮮の宣伝に15歳の少女が利用されそのことに フジテレビが加担したようになったことであろうし、もうひとつは 早紀江さんの言うようにいきなり「拉致」などという言葉を浴びせた質問者への抗議などもあろう。そして翌日には 拉致被害者家族の抗議が待っていた。フジテレビは”勇み足”ではすまされないような失態を犯したことに なるのか。

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