Shine On You Crazy Diamond
ー狂ったダイアモンドー
ピンク フロイド(wright-waters-gilmore)

ー第一部ー
憶えているでしょう、若かった頃  君は太陽のように恍々としていた
 でも君の瞳はすでに異様  青空にあいた黒い穴みたい
硬い結晶となってしまった君の狂気 あとはひたすら世を越えゆくのみ
 スターになっても幼児性を捨てきれず
 そんな君を鋼鉄の風がひきさらった
遠くで君の事をあざ笑う声がする
 君はすでに他界の人だ伝説だ 殉死者だ 徹底的にこの世を無視するがいい
君は人より早く心の神秘を知った 君一人が月に向かって叫んだ
夜の暗い影に怯え 昼の光はまぶしく残酷だった
 でも今、君の狂気は硬いダイアモンドだ
さらに見事な超越者であってくれ
 自分の才能を限界を超えて使い尽くし 君は鋼鉄の風に乗って 行ってしまった
  うわ言しか言わない君 幻視者、絵師、笛師、そして囚人
そのままでいいよ 充分に美しい
ー第ニ部ー 
君がどこにいるか誰にもわからない ひょっとしたら すぐ近くかもしれない
 でもいいさ 君は狂ったダイアモンド ぼくらを無視して輝くがいい
狂気のひだを重ねてゆけよ きっとどこかでまた会えるだろう
 硬く結晶した狂気のダイヤよ  あくまでも超然と見事であってくれ
ぼくらは人気の上にあぐらをかいたまま 世間の寒風に乗って 旅を続けよう
 君は永遠の少年 勝者にして敗者 真実と妄想の探求者
すべてを越えて輝いてくれ    <訳 岩谷 宏>


この曲はピンクフロイドがかつての仲間だったシド・バレットに贈った曲なのだそうだ。
でも そのようなエピソードや歌詞の内容などは私がこの曲を聞く上にはあまり関係ない。
(*長々と訳詞を 引用しておいて言うのもなんだが)
ただひたすら音と旋律を楽しんでいる。この曲に限らずこの「炎」 (Wish You Were Here)というアルバム全体の音が晩秋にふさわしい。少し冷たくて透明で哀愁があって しかもそれほど湿っぽくない。聴いていてもこちらにかかってくる負担は軽いが、内容(音の)は決して 軽いものではない。枯れた草も混じっている草原にさわさわと吹いている風とか、さざなみが立つ光る 湖面とかを思わせる音だ。(えらくうまい連想ができたと思ったら、何のことはない、中ジャケットの写真から きていた。私のイマジネーションもあまり豊かではないらしい。)
ピンクフロイドの連中はもともと 作曲能力があるとは思っていたけど、どの一つをとってみても駄作がない。
握手している片方の男が 炎に包まれているというシュールレアリスム(?)風のジャケットにふさわしい充実した内容だと思う。
訳はレコードに付いているのをそのまま使用した。「硬い結晶となってしまった君の狂気 あとはひたすら 世を越えゆくのみ」とか「でも今、君の狂気は硬いダイアモンドだ」「そのままでいいよ 充分に美しい」 などはすべて"Shine On You Crazy Diamond"という訳しにくいところをそのように意訳している。
("UP-BEAT"1975 11 25発行 掲載)

* 今回はこの季節にふさわしいこの曲を選びました。今手許には持ってないけど(ほとんどの レコードは手許にない)今聞いてもきっと満足するレコードには違いないと思う。
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