さみしさのゆくえ
(「14番目の月」より)
荒井由実

晩夏(ひとりの季節)
(「14番目の月」より)
荒井由実

歌詞 省略

「さみしさのゆくえ」
(ユーミンのアルバム「14番目の月」を)なにげなく聞いていたのだが、3曲目のこの曲を 聞いているうちに胸がキューンとしてきて、涙が止まらなくなった。もともと涙もろい性質(たち)なのでは あるけど、こんなに泣ける曲もめずらしい。とにかく最初から2コーラスまでの導入部がいい。これでこの曲の 雰囲気は決まる。「最果て」「冬景色」という言葉で冬の荒れた灰色の海がまず広がってきて、しかも それには靄がかかっている。次ぎに相手(あなた)は「最果ての国」から帰ってきたというのに、そして再会したと いうのに、それは特別な理由があるのではないこと、つまり二人のどうにもなりようのない関係がさりげなく 語られる。それから過去の「あのとき」のこと。男は「こんな私でもいい」と言ってくれたのに、悪ぶって いた「私」。でも今でもその言葉を大切にしている「私」。それなのに帰って来た彼はすぐに飛び立って しまう。「他人のさみしさなんて救えない」というけどひょっとしたらお互いのさみしさを消し去ることが 出来るかもしれないのに。過去にすれ違った二人の心はすれ違いっぱなしのまま。そしてプッツリと糸は 今度こそ本当に切れてしまうのだ。・・・・こういう内容が軽い(4ビートの)リズムに乗って、強い印象を 与えるしゃれたメロディの繰り返しで歌われる。
この曲の導入部から思い出されるのがルルーシュの 映画「男と女」のあのかもめの群れが舞飛ぶ海辺のシーンだ。この曲はまさにルルーシュの映像に匹敵する 雰囲気がある。−後略ー
「晩夏」
「さみしさのゆくえ」と同じくらい好きなのがラストの曲「晩夏」だ。これを聞いていると 夏の夕暮れどき水を打った後の庭がかもし出す、すがすがしさやしっとりした趣を感じてしまう。 2コーラスでは「銀河」という言葉や「犬の名を呼ぶ子供の声」などでなにやら幻想的な靄がかかってくる。
ー以下略ー ー"UP-BEAT"1977.3.25発行掲載ー
最近CMで(なんのCMだったかはっきりしない、ぼーっと見てるもので)ユーミンの記念すべきファースト アルバム「ひこうきぐも」の中の曲が流れている。それがその曲を聴いた当時と同じような新鮮さと軽い衝撃を いまだに与えてくれる。30年近くもの間、歌手として作詞作曲家として第一線でいられるというのは、すごいことだ。 かつて彼女の曲は若い女性のバイブルのような存在であったと思うが、こういう形で古い曲の紹介をされると、ユーミンの 楽曲はさらに若い女性へと受け継がれていくのだろうな。


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